何が発表されたか
ノボ ノルディスク(Novo)は2026年10月29日、米ニュージャージー州プレインズボロおよびデンマーク・バウスベアから、ObesityWeek® 2026において肥満症ポートフォリオの新データを26演題(abstracts)で発表すると公表した。学会は2026年11月14〜17日、米ワシントンD.C.で開催される。
発表内容は大きく3つの領域にまたがる。開発中(investigational)のCagriSemaに関するREDEFINEプログラムの新規解析、ウェゴビー®(Wegovy®)の経口剤・注射剤のリアルワールドでの治療実態(遠隔医療=テレヘルス環境でのデータを含む)、そして6歳以上12歳未満の小児を対象とした開発段階のセマグルチド注射剤の研究である。
同社の最高科学責任者(chief scientific officer)兼エグゼクティブ・バイスプレジデント(研究開発)であるMartin Holst Lange氏は、「肥満症は複雑な疾患であり、肥満症とともに生きる人々は人生の段階ごとに異なる経験と治療ニーズを持ちうる」と述べ、CagriSema、経口および注射のウェゴビー®のリアルワールドでの治療実態、6歳以上12歳未満の小児における開発中のセマグルチド注射剤という複数の重点領域で知見を共有するとしている。
演題の中身
CagriSema(REDEFINEプログラム)。CagriSemaは、長時間作用型アミリンアナログであるカグリリンチド(cagrilintide)とGLP-1受容体作動薬セマグルチドの固定用量配合剤で、過体重または肥満症の成人向け(REDEFINEプログラム)および2型糖尿病の成人向け(REIMAGINEプログラム)に、週1回皮下注射製剤として開発が進められている。
今回は、低用量を検討したREDEFINE 9の主要結果が発表される。演題名は「REDEFINE 9: Effect of CagriSema 1.7 mg/1.7 mg and 1.0 mg/1.0 mg in Adults With Overweight or Obesity」で、11月15日午後2時30分〜3時30分(ET)のポスターセッションに置かれている。加えて、主要試験であるREDEFINE 1の事後解析(post-hoc)が複数示される。ベースラインBMIと肥満関連合併症別の効果(11月14日 午後7時30分〜8時30分 ET)、身体的・心理社会的機能への影響(11月15日 午前8時30分〜8時45分 ET、口頭発表)、早期反応と体重減少の推移(11月15日 午後2時30分〜3時30分 ET)などで、体重に関連した生活の質(quality of life)の変化を扱う解析も含まれる。米国の過体重・肥満症人口における心血管疾患の一次予防への影響を予測した演題(11月15日)も並ぶ。
ウェゴビー®のリアルワールドと選好。OPTIC試験の解析では、65歳以上と65歳未満の成人で、肥満症治療薬のプロファイルに対する選好がどう異なるかが評価された。テレヘルスでは、Roのプラットフォームを用いた2つのリアルワールド研究が報告される。OCTANE解析は、体重管理目的で経口セマグルチドを開始した成人(治療歴のない患者を含む)の特性を把握し、3カ月時点の体重アウトカム、フードノイズ(food noise)、患者報告アウトカムを評価した。SIGNAL解析は、ウェゴビー®注射剤を開始した治療歴のない過体重・肥満症の成人について、検証済みのRAID-FNスケールを用いてフードノイズと体重の変化を6カ月の追跡で評価している。さらにSWEEP試験の解析では、同社のデジタル患者サポートプログラムでウェゴビー®錠を開始した人々の、自己報告による体重関連アウトカムと治療経験が検討された。医療従事者の治療薬選好、経口セマグルチドとorforglipronの短期的なcost-of-control評価(ORACLE)、米英における1.0/1.7/2.4 mgの実臨床体重アウトカム(STEP ADAPT Real)も含まれる。
STEP Young。6歳以上12歳未満の肥満症の小児を対象に、週1回の開発中セマグルチド注射剤をカロリー制限食と身体活動の増加と併用して評価した試験の全結果が、11月16日午前10時〜11時30分(ET)に口頭発表され、同時に論文公表される。
このほか、アミリンおよびカルシトニン受容体のデュアルアゴニストであるカグリリンチドが減量中の骨量を保持するという演題(11月16日)がある。11月15日午後6時30分〜9時(ET)にはシンポジウム「Obesity in Focus: Today's Evidence. Tomorrow's Possibilities」が予定されている。
何が変わるのか
CagriSemaは米国を含むいずれの国でも承認されておらず、安全性・有効性は確立していない。開発中のセマグルチド注射剤も米国で12歳未満の小児への使用は承認されていない。したがって今回の発表は、承認済み製品の実臨床データと、未承認の開発品のデータが同じ学会で並ぶ構成になる。
注目されるのは軸の置き方である。CagriSema側ではREDEFINE 9という低用量の検討が主要結果として出てくるほか、REDEFINE 1の事後解析が生活の質や身体的・心理社会的機能に向かっている。体重の減少幅だけでなく、どの用量で、どのような患者で、何が改善するのかという問いが前面に出ている。
ウェゴビー®側では、テレヘルスとデジタル患者サポートプログラムという「どこで治療を受けるか」の切り口が複数の演題を占める。経口剤の実臨床データがSWEEPとOCTANEの両方から示される点、そしてフードノイズが検証済みスケールを用いて測られている点は、評価指標の広がりを示している。65歳以上と65歳未満を層別した選好解析や、医療従事者の選好を扱う演題も、治療選択の実態を記述する方向にある。小児領域ではSTEP Youngの全結果が同時公表され、6歳以上12歳未満という年齢帯の知見が加わる。