サノフィは2026年10月20日(現地時間)、Tevaと共同開発中の抗TL1A抗体duvakitugが、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を対象とした第IIb相長期継続投与(LTE)試験「RELIEVE UCCD」(試験ID:NCT05668013)で、維持療法44週時点でも複数の有効性評価項目の改善を維持したと発表した。データはバルセロナで開催された欧州消化器病週間(UEG Week 2026)で示された。日本法人は10月30日に同内容を配信している。
44週時点の数字
UCでは、修正Mayoスコア(mMS)に基づく臨床的寛解率が450 mg群47%[95% CI: 30, 65]、900 mg群58%[95% CI: 42, 73]。臨床的奏効率は82%[61, 91]と87%[71, 94]、内視鏡的改善率は59%[42, 76]と63%[47, 78]だった。対象例数は450 mg群34例、900 mg群38例。
CDでは、SES-CDスコアの50%以上の改善と定義される内視鏡的奏効率が450 mg群41%[25, 62]、900 mg群55%[39, 75]。CDAIに基づく臨床的奏効率は81%[63, 94]と87%[70, 96]、臨床的寛解率は81%[65, 95]と84%[68, 96]。対象例数は450 mg群27例、900 mg群31例だった。
いずれの疾患でも900 mg群の数値が450 mg群を上回り、サノフィは用量反応関係と一致するとしている。なお、これらのデータは記述的に提示され、信頼区間はロジスティック回帰分析により算出されたものである。
試験の組み立てと安全性
RELIEVE UCCDプログラムは、14週間の導入試験と、それに続くLTE試験で構成される。導入試験はUC患者とCD患者の双方が参加できるバスケット試験として設計され、CDにおけるTL1A阻害を検討した初の無作為化プラセボ対照第II相試験と位置づけられている。LTE試験には、導入試験でduvakitugが奏効した130例(UC 72例、CD 58例)が組み入れられ、450 mgまたは900 mgを4週間隔で皮下投与する群に再度無作為に割り付けられた。導入期間を含めた総投与期間は最大58週間。主要評価項目は、UCコホートが臨床的寛解(mMS)、CDコホートが内視鏡的奏効(SES-CD)である。試験には米国、欧州、イスラエル、アジア各国の医療機関が参加した。
安全性については、維持療法期を通じて忍容性は概ね良好で、プロファイルは導入期と同様、新たな懸念は認められなかったとしている。両用量群を合算した集計で5%以上に発現した有害事象は、UCで上気道感染および上咽頭炎、CDで上気道感染、クローン病(病勢悪化)、高血圧、上咽頭炎、貧血、インフルエンザ。有害事象による投与中止率はUCで450 mg群4%、900 mg群2%、CDでは両群とも6%だった。
あわせて、導入試験(NCT05499130)のバイオマーカー解析も発表された。duvakitugにより、UCでは複数の炎症経路のマーカー、CDではTh17およびTh1免疫経路のマーカー、両疾患で血液・組織中の好中球性炎症マーカーが低下。CDでは組織リモデリングのマーカーも低下した。サノフィは、TL1A阻害が炎症だけでなく線維化にも作用しうる機序上の裏づけとしている。導入試験の臨床成績はLancet Gastroenterology and Hepatology誌に掲載済みである。
第III相と提携の構図
duvakitugはすでに、UCでSUNSCAPE-1/2、CDでSTARSCAPE-1/2の第III相試験が進行中。さらに中等症から重症の化膿性汗腺炎を対象とした第II相AURALIGHT試験が開始され、線維狭窄型クローン病を対象とした第II相試験も計画されている。現時点でいずれの規制当局でも安全性・有効性は評価されていない。
維持期の44週データが示す意味は二つある。一つは、導入期の奏効が1年近く持続しうるかという、IBD治療で繰り返し問われる論点に一定の材料が加わったこと。もう一つは、内視鏡所見と症状の双方、さらに線維化関連マーカーまで含めた評価が並んだことで、第III相の読み方の軸が見えてきたことである。ただし今回の維持期は奏効例のみを再無作為化した設計で、数値も記述的に示されている点は押さえておく必要がある。
事業面では、サノフィとTevaが全世界の開発費用と主要市場の純利益・純損失を折半し、その他市場はロイヤリティ協定の対象となる。商業化はTevaが欧州、イスラエルなどを、サノフィが日本、北米、その他アジア諸国などを主導する。日本市場での展開はサノフィが担うことになる。世界で患者数約490万人と推定されるIBD領域において、TL1Aという標的がどこまで位置を得るかは、進行中の第III相4試験の結果にかかっている。