決算の数字

大塚ホールディングスが2026年10月30日に開示した2026年12月期第3四半期決算短信(IFRS・連結、対象期間は2026年1月1日~9月30日)によると、売上収益は2,042,439百万円で前年同四半期比12.3%増、事業利益は436,884百万円で同19.2%増となった。営業利益は423,733百万円(同4.0%増)、税引前四半期利益は422,273百万円(同7.5%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は322,105百万円(同8.2%増)。基本的1株当たり四半期利益は612円03銭(前年同四半期は560円81銭)だった。

事業利益の伸び率が営業利益を大きく上回っているのは、前年同四半期の営業利益にマイクロポート社株式売却益526億円が含まれていたことが決算説明資料に明記されている。同社は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費を控除し持分法による投資損益を加減算した「事業利益」を経常的な収益力の指標として採用している。

為替の前提は1USDが148.08円から158.67円、1EURが165.69円から184.17円へと動いた。為替影響調整後では、売上収益は19,435億円で6.9%増、事業利益は4,109億円で12.1%増。一方、同じ調整後ベースの営業利益は3,987億円で2.1%減、当期利益は2,910億円で2.2%減となっている。

財政状態は、資産合計4,323,273百万円、資本合計3,285,658百万円、親会社の所有者に帰属する持分3,216,875百万円で、親会社所有者帰属持分比率は74.4%(2025年12月期末は72.3%)。

医療関連とNCの中身

セグメント別では全事業が増収となった。医療関連事業の売上収益は1,460,575百万円(前年同四半期比14.2%増)、事業利益は389,601百万円(同21.4%増)。ニュートラシューティカルズ(NC)関連事業は460,631百万円(同6.9%増)、事業利益61,478百万円。消費者関連事業は26,967百万円、その他の事業は97,033百万円だった。

医療関連事業の増減額が大きい項目を見ると、ロイヤリティ収入が前期比86.8%増の703億円増で、キスカリ、プルヴィクト等の売上増に伴うもの。抗精神病薬「レキサルティ」は522億円増(同21.4%増)の2,965億円、「エビリファイ メンテナ/エビリファイ アシムトファイ」は362億円増(同18.7%増)の2,295億円、2025年12月に米国で上市した「VOYXACT(ボイザクト)」は355億円を計上した。臨床栄養は252億円増(同18.8%増)の1,595億円で、2025年5月に米国で輸液事業を開始したことが寄与している。

一方、「ジンアーク」は米国での後発医薬品の浸透により549億円減(同35.3%減)の1,006億円となった。

研究開発費は260,316百万円(同4.7%増)。repinatrabit(フェニルケトン尿症)、TSND-201(PTSD)、フチバチニブ(胆道がん)、新たに臨床試験を開始したADCのARC-02などの開発費が増えた一方、センタナファジン、ウロタロントの開発費が減り、為替影響を除くと前年同期並みだったと説明している。連結範囲では、Otsuka Clinical Nutrition America LLCとTranscend Therapeutics, Inc.の2社が新規に加わった。

NC関連事業では、カテゴリー別に「For Healthier Life」が1,934億円(前期比14.2%増)、「For Women's Health」が478億円(同6.0%増)、「For Climate & Environmental Risk」が1,635億円(同3.6%増)。海外比率は71.7%で前期比2.1ポイント上昇した。製品別では、ネイチャーメイドが15.6%増、エクエルが6.2%増、ポカリスエットが1.1%増となっている。

通期見通しと株主還元

会社は足元の進捗を踏まえ、7月に公表した通期見通しを修正した。売上収益は27,250億円で据え置く一方、事業利益を7月公表の4,700億円から300億円(6.4%)引き上げて5,000億円、営業利益を190億円増の4,880億円、当期利益を150億円増の3,700億円とした。資料は当期利益について「過去最高」としている。研究開発費は3,730億円と、7月公表から120億円引き下げている。なお2025年度実績と同一の為替レートに調整した場合、通期の事業利益は4,752億円で291億円の増加となる一方、営業利益は154億円減、当期利益は226億円減の計算になると説明されている。

配当は、2026年12月期の第2四半期末に100円00銭を実施済みで、期末も100円00銭を予想し年間200円00銭。2025年12月期の年間140円00銭から増える形で、配当予想からの修正はない。自己株式については、2026年2月13日の取締役会で取得および消却を、同年10月30日の取締役会で消却を決議しており、期末自己株式数は19,081,004株(2025年12月期末は14,857,548株)に増えた。期中平均株式数は526,289,803株と、前年同四半期の530,759,580株から減少している。

読み取れること

数字の構図ははっきりしている。独占販売期間が満了したジンアークの549億円の減収を、レキサルティ、エビリファイ メンテナ/アシムトファイ、上市間もないVOYXACT、米国輸液事業、そして87%近く伸びたロイヤリティ収入が吸収し、なお二桁の増収を確保した。特許切れ製品の落ち込みを複数の成長製品と導出品からの収入で埋めるという、同社が第4次中期経営計画で描いた構図が、この9か月の数字の上では機能している。

ただし、営業利益と当期利益を為替調整後で見ると前年同期を下回る。増益の相当部分が円安に支えられていることも、同じ資料が示している。通期で売上収益を据え置いたまま事業利益だけを上方修正した背景には、売上原価と研究開発費の計画引き下げがある。費用の規律で利益を積み増す局面に入ったとも読める。

配当を年間140円00銭から200円00銭へ、自己株式の取得と消却を重ねる姿勢と合わせれば、株主還元の水準を一段引き上げる意思は数字に表れている。一方で、repinatrabit、TSND-201、フチバチニブ、ARC-02といった開発品への投資は続いており、次のドライバーをどこに置くかが問われる段階でもある。