決算の数字
アムジェン(NASDAQ:AMGN)は2026年11月3日、2026年第3四半期の財務結果を発表した。SECに提出された8-Kの添付資料(EX-99.1)によると、第3四半期の総収益は2025年同期比8%増の104億ドル。製品売上も8%増で、伸びは数量増によるものとされている。四半期中に二桁の売上成長を達成した製品は17品目、第3四半期の売上を年換算して10億ドルを超える製品も17品目だった。
利益面では、GAAPベースの営業利益が25億ドルから37億ドルへ増加し、製品売上に対する営業利益率は9.9ポイント上昇して37.5%となった。GAAP EPSは5.93ドルから7.08ドルへ19%増加し、増収が主因と説明されている。非GAAPベースでは営業利益が43億ドルから47億ドル、営業利益率は0.2ポイント上昇の47.3%、EPSは5.64ドルから6.45ドルへ14%増加した。非GAAP EPSの伸びは増収が主因で、営業費用の増加が一部相殺したとされる。
フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた非GAAP指標)は、2025年第3四半期の42億ドルに対し、2026年第3四半期は37億ドル。運転資本の変動によるもので、前年同期がリベートと回収のタイミングの恩恵を受けていたこと、当期の事業業績が一部相殺要因となったことが挙げられている。
ロバート・A・ブラッドウェイ会長兼CEOは「商業ポートフォリオの強さと、重要な臨床面の進展、有望な後期パイプラインが、次の10年にわたって持続的な成長を実現できるという確信を補強している」とコメントしている。
製品別:デノスマブ2剤の大幅減と成長品の伸び
製品売上合計は98億8,300万ドル(前年同期91億3,700万ドル)で、内訳は米国72億5,900万ドル、米国外26億2,400万ドルだった。
最も目立つのは、デノスマブ製剤2品の落ち込みである。Prolia(デノスマブ)は45%減の6億3,200万ドル、XGEVA(デノスマブ)は47%減の2億8,800万ドル。いずれも「複数のバイオシミラーが世界的に発売された」ことが理由で、Proliaは数量が23%減、残りは正味販売価格の低下と売上控除見積もりの変化がほぼ同程度に効いたと説明されている。XGEVAは数量32%減、正味販売価格11%減が主因。
一方で成長品は大きく伸びた。Repatha(エボロクマブ)は37%増の10億8,500万ドル、EVENITY(ロモソズマブ)は39%増の7億5,100万ドル、TEZSPIRE(テゼペルマブ)は43%増の5億3,800万ドル。希少疾患領域ではUPLIZNA(イネビリズマブ)が191%増の4億5,100万ドル、KRYSTEXXA(ペグロチカーゼ)が31%増の4億1,900万ドルとなった。腫瘍領域ではIMDELLTRA/IMDYLLTRA(タルラタマブ)が128%増の4億600万ドル、BLINCYTO(ブリナツモマブ)が27%増の4億9,600万ドルだった。
減少した製品もある。TEPEZZA(テプロツムマブ)は在庫水準の低下により6%減の5億2,600万ドル。Otezla(アプレミラスト)は18%減の4億8,100万ドル。KYPROLIS(カルフィルゾミブ)は8%減の3億3,000万ドル、MVASI(ベバシズマブ)は21%減の1億6,800万ドルだった。TAVNEOS(アバコパン)は2%減の1億500万ドルで、同社は「FDAとの協議を継続しており、TAVNEOSは臨床的有効性と良好なベネフィット・リスクプロファイルを示していると考える」と記載している。
Enbrel(エタネルセプト)は5%増の6億1,100万ドルだったが、正味販売価格は14%低下した。同社はこれを「インフレ抑制法(IRA)に基づく2026年発効の米メディケア・パートDの価格設定が継続して影響している」ためと明示している。
バイオシミラー関連では、AMJEVITA/AMGEVITA(アダリムマブ)が24%増の1億9,100万ドル、PAVBLU(アフリベルセプト)が41%増の3億ドル(数量71%増、正味販売価格18%減)、WEZLANA/WEZENLAが36%増の6,000万ドル。「Other products」に含まれるバイオシミラー製品の合計は、2026年第3四半期が2億5,800万ドル、2025年第3四半期が1億5,100万ドルだった。Aranesp、Neulasta、Parsabivからなる既存製品群は14%増の6億600万ドルで、正味販売価格の19%上昇が寄与した。Nplate(ロミプロスチム)は3%増の4億7,200万ドルだが、米政府向け発注は2025年第3四半期の9,000万ドルから6,500万ドルに減少しており、これを除くと11%増となる。
費用構造とその読み方
GAAPベースの営業費用合計は5%減の66億5,500万ドル。売上原価は製品売上比で5.5ポイント低下し、買収関連資産の償却費減少と製造コスト低下が主因とされる。非GAAPベースでは営業費用合計が8%増の56億8,900万ドルで、売上原価比率は1.1ポイント上昇した。プロフィットシェア費用の増加と売上構成の変化によるものである。
研究開発費はGAAP・非GAAPともに11%増(それぞれ21億1,100万ドル、21億500万ドル)で、「研究および早期パイプラインへの支出増、事業開発活動を含む」と説明されている。販管費はGAAPで2%減、非GAAPで1%減。税率はGAAPが17.5%(前年同期18.0%)、非GAAPが15.9%(同18.2%)だった。
業界にとっての意味
この四半期の数字は、大型バイオ医薬品企業が直面している二つの価格圧力を、同一の決算書の中で同時に示している。一つはバイオシミラー参入で、デノスマブ2剤は合計で前年同期の16億7,800万ドルから9億2,000万ドルへと大きく縮小した。もう一つは制度由来の価格設定で、Enbrelの正味販売価格14%低下にその影響が明示されている。
にもかかわらず製品売上全体が8%増となった構図は、ポートフォリオの入れ替えが数字の上で進んでいることを意味する。Repatha、EVENITY、TEZSPIRE、UPLIZNA、IMDELLTRAといった数量成長ドリブンの製品群が、価格・競合要因で縮む製品群を上回った。さらに同社自身がバイオシミラーの供給側でもあり、PAVBLUは数量71%増と価格18%減が同居するかたちで41%の増収となっている。侵食される側と侵食する側の両方を社内に抱える構造が、四半期ごとの数字に表れている。
GAAP営業利益率が9.9ポイント上昇した一方、非GAAP営業利益率の改善が0.2ポイントにとどまった点も読み解きどころである。GAAP側の改善は買収関連資産の償却費減少など会計要因を含んでおり、実際の事業運営ベースでは、研究開発費11%増が利益率の押し上げを抑えている。研究開発費の増加理由に事業開発活動が挙げられていることは、後期パイプラインへの言及と合わせて、同社が収益の伸びを次の製品群への投資に回していることを示す。フリーキャッシュフローが前年同期から減少したのは運転資本の変動によると説明されており、収益性の悪化とは別の要因として区別されている。