何が発表されたか
大塚ホールディングス傘下、大塚メディカルデバイス株式会社の完全子会社である米Recor Medical, Inc.(本社:カリフォルニア州パロアルト)は2026年11月3日、超音波腎デナベーション(uRDN)システム「Paradise」のGlobal Paradise System(GPS)レジストリ最新結果を公表した。12カ月時点で診察室収縮期血圧が19.5mmHg低下したほか、RADIANCE試験プログラムのプール解析では4年時点での降圧効果の持続が示された。
発表は2026年の経カテーテル心血管治療学会(TCT)で行われ、GPSレジストリの結果は「Best of Endovascular Abstracts」の一部として提示された。TCTではRecorがスポンサーとなった計7本のアブストラクトが発表され、米国のリアルワールドデータと4年の持続性データが含まれる。
数字で見る3つのデータセット
第一に、欧州のリアルワールドデータ。「Blood Pressure Outcomes Following Ultrasound Renal Denervation in Uncontrolled Hypertension: 12-Month Results from the Global Paradise System Registry」では、Felix Mahfoud教授(バーゼル大学病院)が、欧州9カ国で治療を受けた276例の成績を報告した。12カ月時点で診察室収縮期血圧は19.5mmHg低下。高血圧クリーゼの既往がある患者では22.0mmHgとより大きな低下がみられ、半数が15.0mmHg以上の低下を達成した。手技および臨床上の安全性は良好だった。
第二に、米国のデータ。Behnam N. Tehrani医師が発表した多施設共同の米国での使用経験では、Paradise uRDNシステムで治療された238例のプール集団において良好な安全性と手技成績が確認された。経時的フォローアップが完結した58例では、12カ月時点で診察室収縮期血圧が26.9mmHg低下した。
第三に、長期の持続性。共同治験責任医師であるAjay J. Kirtane教授(コロンビア大学ヴァゲロス内科外科大学院)は、RADIANCE-HTN SOLO、RADIANCE II(軽度〜中等度高血圧)、RADIANCE-HTN TRIO(コントロール不良の治療抵抗性高血圧)で治療されたuRDN群293例のプール解析を報告した。4年時点で診察室収縮期血圧は14.9mmHg低下し、92%の患者が血圧低下または降圧薬使用量の減少のいずれかを示した。長期の新たな安全性上の懸念は認められなかった。
Mahfoud教授は「12カ月のGPSレジストリ結果は、Paradise uRDNシステムの安全性と有効性を支持する説得力のあるリアルワールドエビデンスだ」とし、アンメットニーズの大きい高血圧クリーゼ既往例を含め、日常臨床で観察された降圧幅は臨床的に意味があると述べた。Kirtane教授は「腎デナベーション後の長期成績について多くの患者と医師が問うてきた。その点で4年後まで降圧が持続していると報告できるのは非常に心強い」とコメントしている。なお同教授については、Recor Medicalからコロンビア大学への機関資金提供が開示されている。
技術と位置づけ
Paradise uRDNシステムは、腎動脈周囲の交感神経を除神経し、高血圧につながる神経の過活動を抑えることで降圧を図る超音波ベースの新規技術である。主腎動脈から、1回7秒の360度超音波エネルギーを2〜3回照射する。カテーテルには独自の「HydroCooling」機構を備え、処置中にバルーンカテーテル内へ滅菌水を循環させて腎動脈壁の保護を助ける。
同システムは2023年11月に米FDAの承認を取得して現在米国で商業提供されており、CE 2797マークを取得、日本でも承認を受けている。適応は、生活習慣の修正と降圧薬で血圧が十分にコントロールされない高血圧患者における補助的治療としての降圧。手技関連の有害事象としては疼痛、血管アクセス部位の合併症、血管攣縮が最も多いとされる。2026年にはTIME誌の「Best Inventions of 2026」にも選ばれた。
業界にとっての意味
今回の発表の要点は、ランダム化比較試験と日常臨床の双方からデータが積み上がったことにある。RADIANCEプログラムは3件の独立したランダム化シャム対照試験で良好な結果を示しており、そこに欧州9カ国276例と米国238例のリアルワールド成績、さらに293例の4年プール解析が加わった構図だ。デバイス治療では、短期の効果に加えて効果がどれだけ続くかが採用判断を左右する。4年時点で14.9mmHgの低下、92%が降圧または服薬減少という数字は、その問いに対する直接の回答材料となる。
Recorの最高医学責任者Shon Chakrabarti医師は「uRDNのエビデンスはかつてないほど強固になった」とし、腎デナベーションが高血圧治療のパラダイムを変える可能性を強調した。Recorは欧州連合と英国でGPSレジストリを、米国で市販後試験(US GPS)を進めており、リアルワールドエビデンスの収集は継続する。大塚ホールディングスにとっては、医薬品以外の手段で治療選択肢を提供する医療機器事業の進捗を示すデータとなる。