何が起きたか

アステラス製薬(証券コード4503、代表取締役社長CEO 岡村直樹氏)は2026年11月4日、2027年3月期第2四半期(中間期、2026年4月1日〜9月30日)の決算短信を公表した。売上収益は1兆2,709億円(前年同期比23.4%増)、営業利益は3,166億円(同58.8%増)、税引前中間利益は3,175億円(同63.1%増)、親会社の所有者に帰属する中間利益は2,417億円(同63.7%増)。基本的1株当たり中間利益は134円83銭だった。あわせて、2026年4月に公表していた通期業績予想を上方修正した。

同社が収益力の指標として開示するコアベースでは、コア営業利益が4,249億円(同50.3%増)、コア中間利益が3,315億円(同56.8%増)。1株当たりコア中間利益は185円02銭となった。

数字の中身

増収の主因となったのは、同社が「重点戦略製品」と位置づける5製品である。合計売上は3,339億円で、前年同期の2,205億円から51.4%増えた。内訳は、尿路上皮がん治療剤PADCEVが1,583億円(同54.5%増)、地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性治療剤IZERVAYが562億円(同64.5%増)、胃腺がん及び食道胃接合部腺がん治療剤VYLOYが459億円(同72.7%増)、閉経に伴う血管運動神経症状治療剤VEOZAHが307億円(同33.8%増)、急性骨髄性白血病治療剤XOSPATAが429億円(同24.5%増)。PADCEVについては、転移性尿路上皮がんの一次治療に加え、米国での筋層浸潤性膀胱がんへの浸透が進んだと説明している。既存の主力品XTANDIも5,337億円(同11.9%増)と増加した。

地域別では全地域が増収で、米国5,768億円(同26.2%増)、日本1,608億円(同12.5%増)、エスタブリッシュドマーケット3,040億円(同14.8%増)、チャイナ689億円(同38.5%増)、インターナショナルマーケット1,542億円(同38.2%増)となった。

費用面では、販売費及び一般管理費が4,304億円(同6.6%増)、研究開発費が1,677億円(同17.0%増)。いずれも「SMT(Sustainable Margin Transformation)」によるコスト最適化(販管費で約100億円、研究開発費で約80億円)があった一方、為替の影響(同338億円増、同103億円増)やパイプライン進展に伴う臨床開発費の増加(約110億円増)で総額は増えた。期中平均レートは1米ドル159円(前中間期146円)、1ユーロ184円(同168円)で、前年同期のレートを適用した場合と比べ、売上収益で993億円、コア営業利益で412億円の押し上げ要因となった。

フルベースではこのほか、無形資産償却費713億円(前年同期655億円)、その他の費用382億円(同254億円)を計上。その他の費用には、CYP17リアーゼ阻害剤ASP5541の開発中止に伴う無形資産の減損損失264億円が含まれる。

財政状態は、総資産3兆5,278億円(前期末比393億円減)、資本合計1兆9,834億円(同1,525億円増)で、親会社所有者帰属持分比率は51.3%から56.2%へ上昇した。社債及び借入金の合計は5,660億円から4,249億円へ1,410億円減少している。現金及び現金同等物は2,382億円(同434億円減)となった。

通期予想の上方修正と、その意味

通期予想は、コアベースで売上収益2兆3,300億円(期初予想比1,100億円増)、コア営業利益7,000億円(同800億円増)、コア当期利益5,200億円(同600億円増)。フルベースでは売上収益2兆3,300億円、営業利益4,600億円(同650億円増)、当期利益3,500億円(同500億円増)とした。会社は修正理由として、PADCEVやミラベグロンなどの好調な進捗、為替の影響、着実な費用管理を挙げている。想定為替レートは1米ドル158円、1ユーロ181円(前期実績は151円、175円)。配当は第2四半期末40円00銭、年間80円00銭の予想を据え置いた。

この決算が示すのは、XTANDI以外の収益柱が実際の数字として立ち上がってきたことだ。重点戦略製品5品の合計3,339億円は、XTANDIの5,337億円にはまだ届かないものの、伸び率は51.4%とXTANDIの11.9%を大きく上回る。前年同期の2,205億円からの積み上がりを見れば、構成比の逆転は時間の問題という水準にある。

同時に、利益の伸びの相当部分が円安に支えられている点は差し引いて読む必要がある。為替要因を除いた場合の増加額として会社自身が示したのは、売上収益993億円、コア営業利益412億円である。また、ASP5541の開発中止による264億円の減損は、パイプラインへの投資が常に回収されるとは限らないことを改めて示す数字でもある。研究開発費を17.0%増やしながらSMTで販管費を抑え、通期のコア営業利益率の引き上げを見込む構図は、成長投資と利益率改善を同時に進めるという経営の選択を数字の形で表したものといえる。