何が発表されたか

キッセイ薬品工業(本社:長野県松本市、代表取締役会長兼最高経営責任者:神澤陸雄)は2026年11月5日、持続性及び慢性免疫性血小板減少症(ITP)治療薬タバリス(一般名:ホスタマチニブナトリウム水和物)の日本における製造販売後調査の中間集計結果が、2026年12月12〜15日に米国で開催される「68th ASH Annual Meeting and Exposition」のポスター発表に採択されたと発表した。

中間集計の内容は次のとおりである。安全性解析対象集団は799例で、新たな安全性の懸念は確認されなかった。有効性解析集団は769例で、本剤投与開始後2週間の早期より血小板数が増加し、12ヵ月にわたり効果が維持される傾向が確認された。中間集計結果は、2026年4月16日時点で収集されたデータを基に解析している。

ASH(American Society of Hematology)は世界最大規模の血液学国際学会であり、年次総会では血液疾患の最新治療や医薬品の臨床試験結果などが発表される。血液内科医、腫瘍内科医、臨床研究者など血液学の幅広い専門家が世界中から参加する学会と位置づけられている。

調査が実施されてきた背景

タバリスは、米国のライジェルファーマシューティカルズ社により創製された経口投与可能な低分子化合物である。脾臓チロシンキナーゼ阻害作用により、マクロファージによる血小板の破壊を抑制することで血小板の減少を抑制し、持続性及び慢性ITPの出血症状を改善する。2018年の米国での発売を皮切りに、欧州、カナダ、中東で発売されている。

キッセイ薬品工業は2018年10月、ライジェル社から本剤の日本、中国、韓国、台湾における開発権及び販売権を取得した。日本では同社が2023年4月に発売し、韓国ではサブライセンス先であるJWファーマ社が2025年7月に発売した。台湾では、サブライセンス先である台田薬品が2026年7月に承認申請を行っている。

本剤は希少疾病用医薬品であり、国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後の一定期間、全症例を対象に使用成績調査を実施することが求められている。2023年4月の発売から現在に至るまで、同社は本剤を使用する患者の背景情報、および本剤の安全性・有効性に関するデータを収集し、解析を行ってきた。今回ASHに採択されたのは、この全例調査の途中経過にあたる。

対象疾患であるITPは、他に明らかな病気や薬の服用がないにもかかわらず血小板数が10万/μL未満に減少し、出血しやすくなる病気である。主として皮下出血(点状出血または紫斑)を認め、歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、頭蓋内出血なども起こることがある。日本では指定難病であり、2024年度の国内のITP患者数は約1.7万人(2024年度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数)、年間の新患発生数は10万人当たり2.16人と報告されている。なお、令和6年厚生労働省告示第382号に基づき、疾患名は「特発性血小板減少性紫斑病」から現在の名称に変更された。

希少疾患の実臨床データが国際学会に乗る意味

今回採択された中間集計は、治験ではなく、市販後に実際に本剤を投与された患者から集めたデータである。安全性解析対象799例、有効性解析769例という規模は、国内患者数が約1.7万人、年間新患発生数が10万人当たり2.16人とされる希少疾患において、使用実態下の集積としてまとまった数字といえる。治験症例が極めて限られることを理由に全例調査が課された医薬品が、その義務として集めたデータを国際学会の場で示す形になった。

有効性については、投与開始後2週間という早期から血小板数が増加し、12ヵ月にわたり効果が維持される傾向が確認された点が示されている。実臨床における立ち上がりの速さと効果の持続を、どのように医療現場の判断材料として位置づけるかが、発表後の論点になる。

販売地域の面では、日本(2023年4月発売)、韓国(2025年7月発売)に加え、台湾で2026年7月に承認申請が行われている。キッセイ薬品工業がライセンスを持つ地域で展開が進むなかで、先行する日本の使用成績データが共有される意味は小さくない。同社は、今後も本剤の使用実態下における患者の安全性および有効性に関する情報を集積し、持続性及び慢性ITPの治療に一層貢献すべく、適切な情報提供活動を進めるとしている。