何が発表されたか

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村徹)は2026年11月5日、米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(SMPA社)が、米国血液学会(ASH)2026年年次総会で、開発中の抗がん剤2剤に関する最新の臨床データを発表すると明らかにした。年次総会は12月12日から12月15日まで、米国ニューオーリンズで開かれる。

対象となるのは、選択的メニン阻害剤enzomenib(開発コード:DSP-5336)と、PIM1キナーゼ阻害剤nuvisertib(開発コード:TP-3654)の2剤。enzomenib、nuvisertibとも口頭発表1件とポスター発表1件、計4演題が予定されている。

enzomenibの口頭発表は、KMT2A遺伝子の再構成を有する再発または難治性の急性白血病患者を対象に進行中のフェーズ1/2試験のうち、ピボタルフェーズ2パートの有効性および安全性データを初めて示すものとなる。発表は12月13日(日)午後4時30分から午後6時(現地時間)のセッションで、プレゼンテーションは午後5時(現地時間)、場所はHall B、発表者はHarry P. Erba, M.D., Ph.D.。会社は本データについて、高リスクの急性白血病患者集団に対する標的治療の選択肢としてのenzomenibの可能性を示唆するものだと説明している。

用量最適化パートの数字

もう一つのenzomenibの発表は、NPM1遺伝子の変異を有する再発または難治性の急性白血病患者を対象としたフェーズ2試験で、推奨用量を決定するために実施した用量最適化パートの結果。これも初公表となる。12月14日(月)午後6時から午後8時(現地時間)、Hall Fでのポスター発表で、発表者はCristina Papayannidis, M.D., Ph.D.。

示された数字は次の通り。enzomenibを200mgまたは300mgで1日2回投与(BID)した両群において、概ね良好な忍容性および臨床活性が認められた。客観的奏効率(ORR)は200mg BID群で54%、300mg BID群で57%。完全寛解(CR)および部分的な血液学的回復を伴う完全寛解(CRh)の割合(CR+CRh率)は、200mg BID群で35%、300mg BID群で43%だった。

疾患背景として、急性骨髄性白血病患者の約30%がNPM1遺伝子の変異を、5~10%がKMT2A遺伝子の再構成を有しているとされる。急性白血病は血液細胞が急速に増殖し、突然症状が現れるため、早急な治療が必要とされる疾患だ。

nuvisertibはフェーズ3を見据える

nuvisertibについては、JAK阻害剤による治療歴を有する骨髄線維症患者を対象に進行中の、モメロチニブ併用のグローバルフェーズ1/2試験から、フェーズ1用量最適化パートの最新データを発表する。12月13日(日)午前9時30分から午前11時(現地時間)のセッション、プレゼンテーションは午前9時45分(現地時間)、場所はR02-R05、発表者はLindsay A.M. Rein, M.D.。

会社によれば、評価した用量において良好な忍容性が示唆され、症状および脾臓に関する奏効、貧血の改善、サイトカインの調節など有望な臨床活性が認められた。この結果は、貧血を有する骨髄線維症患者を対象としたモメロチニブとの併用療法のフェーズ3の臨床開発を支持するものと位置づけられている。加えて12月12日(土)には、nuvisertibが骨髄線維症患者において巨核球の成熟と血小板産生を促進するとする非臨床・トランスレーショナル領域のポスター発表(発表者:Lilian Varricchio, Ph.D.、Hall F)が行われる。

骨髄線維症は、JAKシグナル伝達経路の調節異常によって骨髄に線維組織が蓄積することを特徴とする稀な血液悪性腫瘍で、世界中で毎年10万人あたり0.7人が新たに発症している。

これまでの規制上の位置づけ

両剤はすでに複数の規制上の指定を受けている。enzomenibは米国食品医薬品局(FDA)から、2022年6月に急性骨髄性白血病、2026年7月に急性リンパ性白血病の適応でオーファンドラッグ指定を、2024年6月にKMT2A遺伝子の再構成またはNPM1遺伝子の変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病の適応でファストトラック指定を、2026年10月にKMT2A遺伝子の再構成を有する再発または難治性の急性白血病の適応でブレイクスルーセラピー指定を受けた。厚生労働省からは2024年9月と2026年8月に希少疾病用医薬品指定を受けている。nuvisertibは骨髄線維症の適応で、FDAから2022年5月にオーファンドラッグ指定、2025年6月にファストトラック指定、厚生労働省から2024年11月に希少疾病用医薬品指定、欧州医薬品庁(EMA)から2025年7月にオーファンドラッグ指定を受けている。

今回の発表で注目されるのは、enzomenibのKMT2A再構成例におけるピボタルフェーズ2データが初めて公の場に出る点だ。ピボタル試験のデータは承認申請の根拠となる性格を持つため、ブレイクスルーセラピー指定を2026年10月に取得した直後のこのタイミングでの開示は、開発段階の進展を示す節目といえる。NPM1変異例では用量最適化パートで推奨用量の決定に必要なデータが揃い、nuvisertibでもフェーズ3開発を支持する結果が得られたとされており、住友ファーマは両剤について、治療選択肢が限られている急性白血病と骨髄線維症の患者の治療成績改善への貢献を目指すとしている。