何が発表されたか
大鵬薬品工業と子会社のTaiho Oncology, Inc.(大鵬オンコロジー)は2026年11月5日、骨髄異形成症候群(MDS)または慢性骨髄単球性白血病(CMML)の患者を対象に経口azacitidine-cedazuridine配合剤(開発コード:ASTX030)を評価したAZTOUND試験の結果が、2026年12月12日から15日まで米国ニューオーリンズで開かれる第68回米国血液学会(ASH)年次総会で口頭発表されることを明らかにした。
同社はすでに、本試験の第III相単剤療法パートについて、総投与サイクルAUC0-24(投与後0~24時間の血中濃度時間曲線下面積)を指標に、経口投与時と皮下投与時のazacitidine曝露量の比として評価した主要評価項目を達成したことを発表している。安全性プロファイルは皮下投与のazacitidineと同様だった。この結果に基づき、大鵬オンコロジーはMDSまたはCMMLの成人患者に対する経口治療レジメンとして、本剤の承認を求める新薬承認申請を米国食品医薬品局(FDA)に提出する予定としている。
発表演題は「Pooled Phase 1/2 Efficacy and Phase 3 Pharmacokinetic (PK), Pharmacodynamic (PD), and Safety Analyses of ASTX030 (Oral Azacitidine-Cedazuridine)」。発表者はThe University of Texas MD Anderson Cancer Centerの白血病部門Chair Ad InterimであるGuillermo Garcia-Manero氏で、セッション「637. Myelodysplastic Syndromes: Clinical and Epidemiological」において、現地時間2026年12月14日11時45分から(セッションは10時30分~12時00分)、MCCNO - Great Hall ADで口頭発表される。
試験結果の数字
第I相・第II相単剤療法パートの有効性統合解析の対象は、第I相で第II相推奨用量(RP2D)に近いazacitidine/cedazuridineの用量(136mg/20mg、140mg/20mgまたは144mg/20mg)、および第II相でRP2D(140mg/20mg)の投与を受けたMDS患者45例。年齢中央値は73歳、治療サイクル数の中央値は6サイクル、治療期間中央値は5.7カ月、追跡期間中央値は25.6カ月(範囲:19-33カ月)だった。全奏効率は44.4%(95%信頼区間:29.6-60.0)で、International Working Group 2006奏効基準に基づく完全奏効は9例(20.0%)。全生存期間中央値は未到達(95%信頼区間:21.6カ月-評価不能)である。なお全奏効率は、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、骨髄完全寛解(mCR)または血液学的改善(HI)が得られた患者の割合を指す。
現在実施中の無作為化クロスオーバー第III相単剤療法パートでは、最適なazacitidine曝露量を得るため、体表面積(BSA)に基づき低BSA群・中BSA群・高BSA群にそれぞれazacitidine/cedazuridineとして105mg/20mg、140mg/20mg、175mg/20mgを投与した。83例を対象としたAUC同等性解析では、主要な薬物動態評価項目である幾何平均比が95.2%(90%信頼区間:86.5-104.7)となり、主要評価項目を達成。経口投与と皮下投与のAUC同等性が確認された。ベースラインからのLINE-1脱メチル化率に基づく解析でも、経口投与と皮下投与で同様の脱メチル化プロファイルが認められた。
71例を対象とした安全性解析では治療期間中央値が1.6カ月。治療下で発現した有害事象(TEAE)は92%、うちグレード3以上は68%に認められ、グレード3以上の主なものは貧血(24%)と好中球減少症(20%)だった。重篤な有害事象は34%で、主に発熱性好中球減少症(9%)、肺炎(6%)。新たな安全性シグナルは認められなかった。臨床での有効性を含む第III相試験のその他の評価項目は、試験の継続に伴い評価される予定としている。
背景と位置づけ
本剤は、DNAメチル基転移酵素阻害剤であるazacitidineと、azacitidineが分解されることなく体内で活性を維持できるよう作用するシチジンデアミナーゼ阻害剤であるcedazuridineを組み合わせた経口剤で、大鵬オンコロジーと親会社の大鵬薬品が開発している。現時点では治験薬であり、いかなる規制当局からも承認を取得していない。
AZTOUND試験の第III相単剤療法パートは、MDSまたはCMMLの成人患者88例を対象とした無作為化オープンラベルクロスオーバー試験で、主要評価項目として総投与サイクルAUC0-24曝露量を評価した。
対象疾患のうちMDSは造血幹細胞の異常によって生じる多様な疾患群で、米国では毎年約1万~1.5万人の新規患者が発生すると推定され、約3分の1が急性骨髄性白血病(AML)へ移行する可能性があるとされる。CMMLは骨髄および血液中に異常な単球が蓄積するクローン性造血器悪性腫瘍で、米国では年間約2,000例が新たに診断され、患者の約15~30%がAMLへ移行する可能性があるという。
業界にとっての意味
今回の発表の核心は、臨床的な有効性の上積みではなく、経口剤が皮下注射と同等のazacitidine曝露量を示したという薬物動態の同等性にある。承認申請の根拠として曝露量の同等性を主軸に据えた構成であり、第III相の臨床有効性評価項目は試験継続とともに今後評価されるという整理になっている。
大鵬オンコロジーのChief Medical OfficerであるHarold Keer氏は「本剤の薬物動態学的曝露に関する最新の知見を発表するとともに、本剤の承認取得に向けた取り組みを引き続き進め、この治療選択肢をMDSまたはCMMLの患者さんへ届けられることを期待している」とし、治療負担の軽減に寄与する可能性のある経口治療を含め、血液がん患者のニーズに応える治療法の開発に取り組むとコメントしている。皮下投与が前提だったレジメンを経口に置き換えられるかどうかは、通院頻度を含む治療の形そのものに関わる論点であり、FDAへの申請の行方が次の焦点となる。大鵬オンコロジーは経口抗がん剤の開発と販売に注力しており、本剤はその路線上に位置づけられる開発品といえる。