何が発表されたか

株式会社ヘリオス(東証グロース:4593、代表執行役社長CEO 鍵本忠尚)は2026年11月5日、第44回日本脳腫瘍学会学術集会において「Dual CAR-eNK®細胞を用いた膠芽腫に対する次世代免疫細胞療法の開発」と題したポスター発表が行われることを公表した。

同学術集会は2026年11月29日から12月1日まで、福井県(あわら温泉 清風荘)で開催される。発表は11月30日(月曜日)22:00〜22:30、ポスター会場(清風荘7F 紫宝)で行われる。セッションはポスター29「腫瘍免疫・免疫療法1」、演題番号はPS29-3。

発表者は九州大学大学院医学研究院脳神経外科の波多江龍亮助教。演者には同科の波多江龍亮氏、山下壮二朗氏、空閑太亮氏、吉本幸司氏と、株式会社ヘリオス神戸研究所の福谷祐真氏、櫻井哲哉氏、林真琴氏、鳥澤勇介氏、山田雅司氏、田村康一氏、木村博信氏が名を連ねる。アカデミアと企業研究所の共著という形式で、共同研究の成果が報告される構成だ。

九州大学との共同研究の一環

今回の発表は、ヘリオスが国立大学法人九州大学大学院医学研究院脳神経外科と締結した、CAR-eNK®細胞を用いた脳腫瘍に対するがん免疫細胞療法に関する共同研究契約に基づくものである。同契約については、2025年10月14日に「九州大学大学院医学研究院とヘリオス 遺伝子編集CAR-eNK細胞を用いた脳腫瘍に対する免疫細胞療法に関する共同研究契約締結のお知らせ」として公表されている。今回の開発はこの共同研究の一環として進められている。

基盤となるeNK®細胞(開発コード:AKT-01/HLCN061)は、遺伝子導入技術により細胞傷害活性の増強に加え、患者免疫細胞のリクルートや固形がんへの浸潤特性も強化した、同社独自の遺伝子導入iPSC由来NK細胞プラットフォームと位置づけられている。同社と開発パートナーの株式会社Akatsuki Therapeuticsは、ヒト肺がん細胞生着マウスモデル、ヒト肝がん細胞生着モデルマウス、ヒト中皮腫細胞生着マウスモデル、さらに肺がん患者由来のがんオルガノイド(F-PDO®)に対する抗腫瘍効果を確認している。国立がん研究センターとの共同研究では、同センターが保有する複数種類のがん種由来のPDX移植マウスを用いて、ヒト肺がん組織に対する抗腫瘍効果を確認した。このほか兵庫医科大学とは中皮腫、広島大学大学院とは肝細胞がんを対象とした共同研究が進む。eNK®細胞については、治験開始を目指してPMDAおよび米国FDAとの相談が進められている。

Dual化が意味するもの

CAR-eNK®細胞は、他家iPS細胞由来NK細胞であるeNK®細胞を基盤に、がん細胞に特徴的に発現する分子を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を導入した次世代型のがん免疫細胞だ。NK細胞本来の自然免疫活性に、特定のがん抗原を認識する獲得免疫的な標的能力を併せ持たせる設計であり、治療抵抗性や抗原喪失による免疫回避という課題への対処が期待されるとしている。Dual CAR-eNK®細胞は、標的となるがん細胞を二重化することで、従来型CAR-eNK®細胞の細胞傷害活性をさらに強化できる可能性があると説明されている。

膠芽腫という難治性の脳腫瘍を対象に、抗原を二重に認識する設計の細胞を当てるという今回の報告は、eNK®細胞プラットフォームの適応拡大がどこまで進んでいるかを示す材料となる。肺がん、肝がん、中皮腫、胃がん腹膜播種といった既報の対象に脳腫瘍が加わる形であり、同社が複数のアカデミアと並行して進めてきた共同研究の成果が、学会という公開の場で順次示される段階に入ったといえる。治験開始に向けた規制当局との相談が進行中であることを踏まえれば、こうした学会発表の積み重ねは、プラットフォームの汎用性を裏づける公開データとしての役割を担うことになる。