何が発表されたか
Genmab A/S(Nasdaq: GMAB)は2026年11月4日(コペンハーゲン発)、皮下投与のT細胞engaging二重特異性抗体エプコリタマブを評価した22演題が、米国血液学会(ASH)第68回年次総会で発表または公開されると発表した。会期は2026年12月12〜15日、会場は米ルイジアナ州ニューオーリンズで、バーチャル開催も併用される。
22演題のうち6演題が口頭発表で、残りはポスター発表と、会場発表を伴わない「publication only」のe-Publicationである。
最大の注目は、再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(R/R DLBCL)を対象に、固定期間投与のエプコリタマブ+レナリドミドを評価した第3相EPCORE DLBCL-4試験の主要結果が、今回初めて開示される点だ。対照はリツキシマブ+ゲムシタビン+オキサリプラチン(R-GemOx)で、演題番号919として12月14日午後2時45分〜3時に発表される。この結果はASH 2026のプレスプログラムでも取り上げられる。同試験からは、健康関連QOL(HRQoL)を比較したポスター(演題5463、12月14日)も別途発表される。
口頭発表には、このほか以下が含まれる。CAR-T後の早期・高再発リスク集団でctDNAに基づく介入を行ったEpLCART中間結果(演題79)、R/R慢性リンパ性白血病(CLL)でエプコリタマブ+ベネトクラクスを評価したEPCORE CLL-1のコホート1・2の初回結果(演題105)、高腫瘍量の濾胞性リンパ腫(FL)に対する一次治療としてのリツキシマブ併用第2相試験(演題166)、未治療FLでのエプコリタマブ+レナリドミド第2相医師主導試験(演題167)、そして1L DLBCLでのpola-R-CHP併用を評価したEPCORE NHL-5の33カ月追跡(演題622)である。演題79、166、167は医師主導試験と注記されている。
ポスターでは、R/R FLを対象にエプコリタマブ+R2(リツキシマブ+レナリドミド)とR2を比較した第3相EPCORE FL-1のサブグループ解析の更新(演題3550)、EPCORE NHL-2のR-ICE併用の更新データ(演題1932)、3次治療以降のリアルワールドエビデンスであるReal-EPCOR(演題2716)、米国での費用対効果分析(演題4406)などが並ぶ。e-Publicationには、エプコリタマブ+レナリドミドとモスネツズマブ+ポラツズマブの時間・コスト比較と、日本人患者を対象とした多施設リアルワールド評価J-REALEPCOの中間解析結果が含まれる。
背景
エプコリタマブは、GenmabのDuoBody技術を用いて創製されたIgG1二重特異性抗体で、T細胞上のCD3とB細胞上のCD20に同時に結合し、T細胞を介したCD20陽性細胞の傷害を誘導する。米国と日本ではEPKINLY、EUではTEPKINLYのブランド名で承認され、特定のリンパ腫適応で65カ国超の規制当局から承認を得ている。
開発・販売はAbbVieとの腫瘍領域協業の下で進められ、米国と日本では両社が販売責任を分担し、それ以外の地域の商業化はAbbVieが担う。両社はR/R FL適応の国際的な追加承認と、R/R DLBCL適応の追加承認を引き続き進める方針だ。未治療FLを対象にエプコリタマブ+R2と化学免疫療法を比較する試験(NCT06191744)も進行中である。
GenmabのJudith Klimovsky開発責任者(Executive Vice President and Chief Development Officer)は「今年のASHで採択された試験の幅広さは、エプコリタマブの有用性を最大限に探索するという当社のコミットメントを反映しており、単剤および併用で、治療ラインを問わずB細胞悪性腫瘍の中核的治療となる可能性への確信を強めるものだ」とコメントしている。
業界にとっての意味
今回の演題構成は、エプコリタマブの開発が「後方ラインの単剤」から「より早期のライン」「併用レジメン」「複数の疾患サブタイプ」へと面的に広がっている段階にあることを示している。DLBCLでは1Lのpola-R-CHP併用(NHL-5)、FLでは未治療例での併用、CLLではベネトクラクス併用と、CD20×CD3二重特異性抗体の適用範囲が当初の適応を越えて検証されている。
なかでもEPCORE DLBCL-4は、移植やCAR-T以外の選択肢が問われるR/R DLBCLで、標準的な比較対照であるR-GemOxに対する第3相の主要結果である。同じ試験からHRQoLデータも示され、さらに費用対効果や他剤との時間・コスト比較といった医療経済学的解析が複数並ぶ点は、二重特異性抗体の評価軸が有効性・安全性だけでなく、医療資源への影響にも及んでいることを示す。
日本の関係者にとっては、EPKINLYとして国内承認済みであること、日本と米国でGenmabとAbbVieが販売責任を分担していること、そして日本人患者のリアルワールドデータ(J-REALEPCO)の中間解析が今回公開されることが接点となる。なお、通常演題はすでにASHのウェブサイトで公開済みで、レイトブレイキング演題は2026年12月7日午前9時(米東部時間)に掲載される。Genmabは12月16日午前10時30分(米東部時間)/午後4時30分(CET)に、2026年R&Dアップデートとデータレビューをオンラインで開催する(ASH年次総会の公式プログラムではない)。
発表内容の多くは試験的な使用であり、これらの用途におけるエプコリタマブの安全性と有効性は確立されていない。