何が発表されたか

Kura Oncology, Inc(本社:米国サンディエゴ)と協和キリン株式会社(本社:東京都千代田区)は2026年11月5日、2026年12月12日から15日まで米国ルイジアナ州ニューオーリンズで開催される米国血液学会(ASH)年次総会において、メニン阻害剤ziftomenibに関する8件の抄録(口頭発表4件、ポスター発表4件)が採択されたと発表した。両社は戦略的提携およびライセンス契約に基づき、急性骨髄性白血病(AML)を対象にziftomenibのグローバルでの開発・商業化に共同で取り組んでいる。

今回の目玉は、ziftomenibとFLT3阻害剤であるquizartinibおよびgilteritinibとの併用療法に関する、初の臨床試験結果である。内訳は次の2件の口頭発表となる。

  • KOMET-007試験:新規診断のNPM1/FLT3-ITD共変異AMLを対象に、ziftomenibとquizartinib、強力化学療法(7+3療法)の併用を評価(Oral #902、12月14日15:00 CST/Great Hall BC)
  • KOMET-008試験:再発・難治性NPM1/FLT3共変異AMLを対象に、ziftomenibとgilteritinibの併用を評価(Oral #66、12月12日10:45 CST/Great Hall AD)

いずれも安全性および臨床活性に関する初期データが報告される。

併用と探索的解析、小児試験まで

KOMET-007試験からはポスター発表も予定されている。強力化学療法の適応とならない新規診断のNPM1変異AML患者を対象に、ziftomenibとベネトクラクス/アザシチジンを併用した際の奏効の持続期間、全生存期間、安全性に関する長期フォローアップデータが示される(Poster #5192、12月14日18:00〜20:00 CST/Hall F)。両社は、この結果が同じ併用療法を評価中のグローバル無作為化第3相KOMET-017試験を支持するものだと説明している。

また、KOMET-001試験の探索的解析では、NPM1変異もKMT2A再構成も有さず、MEIS1発現との関連が知られる他のゲノム異常を持つ再発・難治性AML患者を対象に、ziftomenib単剤療法の臨床活性が報告される(Poster #5190、同日・同会場)。資料では、この解析は異なる分子学的特徴を持つAML患者集団におけるさらなる検討を支持する位置づけとされている。

このほか口頭発表が2件ある。1件はBlood Cancer UnitedおよびPrincess Maxima Centerがスポンサーを務める第1相ITCC-101/APAL2020K試験(PedAL)から、KMT2A再構成、NUP98再構成、またはNPM1変異を有する小児の再発・難治性急性白血病を対象に、ziftomenibとフルダラビン/シタラビンの併用を評価した初回結果(Oral #666、12月13日17:45 CST/Hall B)。もう1件は、SETBP1変異白血病における白血病原性転写プログラムの維持に関わるメニン関連KMT2Aクロマチン複合体についての非臨床研究である(Oral #101、12月12日10:30 CST/Hall C)。8件の抄録は、医師主導試験を含めASH公式ウェブサイトで公開されている。

背景:NPM1とFLT3が重なる患者集団

資料によれば、FLT3変異はAML患者の約3分の1に認められ、NPM1変異を有する患者では約半数にFLT3変異も認められる。つまりNPM1とFLT3の両方に変異を持つAMLは一定の規模を持つ集団であり、両社はここをziftomenibとの併用療法を検討するうえで重要な患者集団の一つと位置づけている。

ziftomenibは米国ではKOMZIFTIの製品名で販売される1日1回経口投与のメニン阻害剤で、感受性のあるNPM1変異を有し、他に満足できる代替治療選択肢のない再発・難治性AMLの成人患者を対象に、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。現在は新規診断および再発・難治性のNPM1変異AML、KMT2A再構成AML、FLT3変異を併せ持つAMLを対象とした併用療法を含め、複数の臨床試験で評価が進む。

Kura OncologyのChief Medical OfficerであるMollie Leoni氏は「さまざまな治療アプローチとの併用における臨床試験データの蓄積を通じて、ziftomenibを併用療法において選好されるメニン阻害剤として確立することを目指しています」とコメントし、quizartinibおよびgilteritinibとの結果によって、その戦略をFLT3阻害剤との併用へ広げると述べている。

意味:単剤承認から「組み合わせの薬」へ

今回の8演題の並びを見ると、ziftomenibの開発が、承認済みの再発・難治性NPM1変異AMLという単剤の足場から、治療ラインと併用相手の両方向に広がっていることが分かる。新規診断では7+3療法+quizartinib、強力化学療法の適応外ではベネトクラクス/アザシチジン、再発・難治性ではgilteritinib。さらにNPM1変異・KMT2A再構成以外のMEIS1関連サブタイプ、そして小児の急性白血病まで、対象が段階的に試されている。

FLT3阻害剤との併用データが初めて示される意味は小さくない。NPM1変異AMLの約半数がFLT3変異を併せ持つという数字は、この併用が例外的な組み合わせではなく、現場で頻繁に直面する遺伝子背景への対応であることを示している。メニン阻害とFLT3阻害という作用機序の異なる薬剤を重ねたときの安全性がどう出るかは、今後の開発設計を左右する論点になる。

また、ベネトクラクス/アザシチジン併用の長期フォローアップは、すでに動いている第3相KOMET-017試験の裏づけとなるデータであり、第1b相から第3相へと続く流れの中での位置づけが明確だ。協和キリンにとっては、注力領域に掲げる血液がん・難治性血液疾患での開発成果が国際学会の場で複数示されることになる。なお、探索的解析はあくまで今後検討すべき可能性を探るためのものであり、有効性が確立されたことを意味しない点には留意が必要だ。