GSKは2026年11月5日(ロンドン発)、米コロラド州デンバーで11月5日から9日まで開かれる米国肝臓病学会(AASLD)The Liver Meeting® 2026において、肝疾患ポートフォリオの新データを発表すると公表した。
発表される内容
公表資料によれば、今回の発表は21演題にのぼり、慢性B型肝炎(CHB)、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)、アルコール関連肝疾患(ALD)の3領域にまたがる。
中心となるのは、慢性B型肝炎治療薬Hibsago(一般名:ベピロビルセン)の長期データセットである。第III相B-Well試験からは、ウイルス学的に抑制されたCHB患者において、すべてのHBV治療を中止してから48週後の機能的治癒(functional cure)率が口頭発表(#0266)で示される。さらに、治療中止1年後に機能的治癒に至らなかった参加者におけるHBs抗原(HBsAg)の推移(ポスター#4151)、12週時点および治療完了時のHBsAg値を機能的治癒の予測因子として評価した解析(口頭#0260)、初回治療後に再発した患者への再投与と機能的治癒の可能性を扱う予測モデリング(ポスター#4163)が報告される。中国のCHB患者を対象とした後ろ向きコホート解析(ポスター#4045)では、HBsAg消失と、肝硬変や肝細胞がんを含む長期的な重篤転帰リスクの低減との関連が示される。
MASH領域では、開発中のエフィモスフェルミン(efimosfermin)の第II相データが示される。中等度から高度の線維化、または代償性肝硬変(F2〜4)を有するMASH患者を対象に、非侵襲的な線維化マーカーの改善と安全性を52週まで評価した非盲検第II相試験の結果(ポスター#2299)、およびF2/F3患者における肝脂肪減少と組織学的線維化改善との関連(ポスター#5025)が含まれる。進行中の第III相試験であるZENITH-1/2(F2/F3のMASH)とNEBULA-1/2(代償性肝硬変を伴うMASH)についても、trials in progressとしてポスター発表(#3576、#3558)が予定されている。このほか、ALD患者の症状・機能を捉える患者報告アウトカムに向けた文献ベースの検討(ポスター#3137)なども並ぶ。
背景にある治療上の空白
資料は、既存治療があるにもかかわらず肝疾患の疾病負荷が大きい点を強調している。肝疾患は世界の死亡の25人に1人を占め、CHB、MASH、ALDが肝関連死の大半を構成する。CHBは世界で2億4,000万人超が罹患し、年間およそ110万人が死亡、世界の肝がんの最大の原因とされる。CHBの既存治療はウイルスを抑制できるものの、多くの患者が生涯にわたる治療を必要とする。MASHでは、迅速承認や条件付き承認の経路で承認された治療は中等度から高度の線維化が適応であり、より進行したMASHに承認された選択肢はない。ALDについては、禁酒を支援する薬剤以外に、疾患そのものに直接作用する承認薬は存在しない。
ベピロビルセンはHBVのRNA産生を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドで、GSKがIonisからライセンスを受け、共同で開発を進めてきた。米FDAのブレークスルー指定と優先審査、中国でのブレークスルー治療薬指定と優先審査指定、日本での先駆け(SENKU)指定を受けており、日本と米国で承認されている。今回の長期データセットは、直近の米FDAによるHibsagoの承認に続くものと位置づけられている。エフィモスフェルミンは月1回皮下投与の長時間作用型FGF21バリアントで、米FDAと中国CDEのブレークスルー治療薬指定、欧州EMAのPRIME指定を受け、ZENITH(F2-3)、NEBULA(F4)の第III相、ALDを対象とするALLSTAR第II相が進行中とされる。
何が変わるか
GSKのKaivan Khavandi氏(SVP, R&D Head Respiratory, Immunology & Inflammation、Head of Translational & Development Sciences)は「CHB、MASH、ALDといった肝疾患が世界で年間およそ200万人の死因となっており、新しい治療の必要性は明らかだ」と述べ、治療選択肢が限られる患者への対応を強調している。
今回の構成から読み取れるのは、GSKがCHBで「治療の継続」から「機能的治癒とその予測」へと議論の軸を移そうとしている点である。12週時点のHBsAg値による治癒予測、治癒に至らなかった患者のHBsAg推移、再発例への再投与モデリングという3点は、いずれも誰にどう使うかという治療戦略の設計に関わる。承認後に必要となるのは有効性の提示だけでなく、適応患者の選別と再治療の指針であり、その土台づくりが進んでいることになる。MASHでは、承認薬が存在しないF4(代償性肝硬変)まで射程に入れた第II相データと、F2-3・F4を分けた第III相の二本立てが示された。線維化の進行段階ごとに開発を切り分ける構図が、この領域の標準になりつつあることをうかがわせる。