52週継続率は85.6%対46.3%
ギリアド・サイエンシズは2026年11月6日、HIV曝露前予防(PrEP)を対象とした第2相試験「PURPOSE 5」の結果を発表した。年2回皮下投与のレナカパビルを開始した人の継続率は、1日1回経口のエムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(F/TDF)を開始した人より有意に高かった。データはHIV Glasgow 2026で発表される。
試験は英国とフランスで実施された進行中の第2相・無作為化非盲検試験で、組入れ時点でPrEPを使用していない、PrEPの便益が見込まれる人を対象とした。登録は267人。内訳はシスジェンダー男性72.3%、シスジェンダー女性7.1%、ジェンダー・ダイバースな人々20.6%で、ベースラインでPrEP未経験者は37.8%だった。参加者は2対1で年2回投与レナカパビル群と1日1回経口F/TDF群に割り付けられ、52週間追跡された。
52週時点の継続率は、レナカパビル群が85.6%(154/180)、F/TDF群が46.3%(37/80)。差は39.3(95%CI:26.66%〜51.41%)で、統計学的に有意だった(p<0.0001)。52週の試験期間中、レナカパビル群でのHIV感染はゼロ。F/TDF群では1件のHIV感染が報告され、診断時点の薬物血中濃度の解析は週2回未満の服用と整合する結果だった。52週の来院率は、レナカパビル群89.4%、F/TDF群83.9%と両群とも高く維持された。
本試験での「継続(persistence)」はプロトコル上、厳格に定義されている。レナカパビルでは、1日目/ベースラインと26週(±2週)の時点で予定どおり注射を受け、52週の追跡来院を予定どおり実施したこと。F/TDFでは、13週、26週、39週、52週の各時点で、乾燥血液スポット(DBS)中のテノホビル二リン酸(TFV-DP)濃度が週4回以上の服用と整合する水準(700 fmol/punch以上)であることとされた。
安全性プロファイルは、HIV予防に関するこれまでのレナカパビルの試験とおおむね一致した。重篤な有害事象はまれで、レナカパビル群3.9%、F/TDF群3.4%。治験責任医師は、いずれの重篤な有害事象も治験薬との関連はないと判断した。レナカパビルで有害事象による投与中止はなかった。治療関連事象で最も多かったのは軽度または中等度の注射部位反応で、結節67.8%、疼痛60.0%、硬結20.6%、紅斑17.8%だった。
「始めること」ではなく「続けること」を測る試験
PURPOSE 5は、現在経口PrEPを使用していない人を対象に、長時間作用型のHIV予防選択肢と1日1回経口PrEPの継続性を比較することを目的に設計された初の無作為化試験である。PrEPの認知度と利用可能性は高まったものの、継続は多くの地域で課題として残り、実臨床の研究では使用開始から1年以内に中止する人が少なくないことが一貫して示されてきた、とギリアドは説明している。F/TDFは現在、世界で最も広く使われている経口PrEP薬である。
UNAIDSによれば、2025年には世界で約120万人が新たにHIVに感染した。継続性は実臨床における予防効果を左右する最も重要な要因の一つと位置づけられている。
クイーン・メアリー大学ロンドンのクロエ・オーキン教授は「PrEPを始めることも重要だが、続けることが感染を防ぐうえで決定的だ」と述べ、本試験が新規PrEP使用者を高い割合で組み入れられた点にも言及した。ギリアドのジャレッド・ベーテン氏は、今回の結果が「PrEPを始めること」と「続けること」の間のギャップを埋める可能性を示すとしている。
PURPOSE 5は、多様な集団・環境でレナカパビルを評価するギリアドのPURPOSEプログラムの一部で、同プログラムはPURPOSE 1〜5の5試験で構成される。PURPOSE 1とPURPOSE 2では年2回注射のレナカパビルの安全性と有効性が評価された。
評価軸が「有効性」から「継続性」へ広がる
今回のデータの意味は、評価指標そのものにある。PrEPは「正しく服用すれば高い有効性を示す」ことが前提だが、PURPOSE 5は、その前提が実際にどれだけ満たされるのかを無作為化比較で直接測りにいった。投与間隔を6カ月に1回へ延ばすという設計変更が、継続率の差として39.3ポイントという形で現れたことになる。
年2回投与レナカパビルは、HIV感染リスクのある成人・青少年の性行為によるHIV感染リスク低減を目的としたPrEPとして複数の国で承認済みで、多剤耐性HIVの治療薬としても複数国で承認されている。ギリアドは、年1回注射を含む複数の投与間隔の選択肢を開発中としている。製品ラベル上は、投与開始前および各注射前にHIV-1陰性の確認が必須とされ、未診断のHIV-1感染下での使用による薬剤耐性のリスクが枠組み警告として明記されている点は変わらない。
継続性というアウトカムが臨床試験の主要な比較軸として立てられたことは、長時間作用型製剤の価値をどう測るかという議論に、具体的な数値を提供するものとなる。