四半期は13億ドル、EPSは0.38ドル

モデルナは2026年11月6日、2026年第3四半期の決算と事業アップデートを公表した。総売上高は前年同期の10億ドルから29%増の13億ドル。国際市場での新型コロナワクチン販売の増加と、長期の政府間戦略的パートナーシップに基づく供給が主な押し上げ要因とされる。内訳は米国が7億8,000万ドル、国際市場が5億3,300万ドルだった。

費用面では、売上原価が3億1,800万ドル(うち第三者へのロイヤルティ6,500万ドル)で前年同期比54%増。販売数量の増加と製造関連費用の増加による。一方、研究開発費は5億8,300万ドルで27%減少した。感染症領域の一部後期試験が完了・縮小したことと、全社的なコスト効率化が理由と説明されている。販売管理費は2億8,200万ドルで5%増にとどまった。

この結果、純利益は1億6,200万ドル。前年同期の2億ドルの純損失から3億6,200万ドルの改善となった。希薄化後1株当たり利益は0.38ドルで、前年同期の0.51ドルの損失から黒字に転じている。法人税費用は、繰延税金資産の大部分に対する評価性引当金を継続して計上しているため、両期間とも重要な金額ではない。

9月30日時点の現金・現金同等物および投資は80億ドルで、6月30日時点の69億ドルから増加した。9月に実施した転換社債の発行とキャップド・コール取引による純手取金26億ドルが主因で、第1四半期に公表した訴訟和解に関する9億5,000万ドルの支払いなどが一部相殺した。四半期の製品販売の多くが期末時点で未回収であることにも言及している。

通期見通しを引き上げ、年末現金残高は8.1〜8.3億ドル増の水準へ

2026年通期の総売上高について、同社はこれまでの「最大10%増」から「15〜25%増」へと見通しを引き上げた。売上の約半分が米国、約半分が国際市場からという構成見通しは維持している。

費用見通しでは、売上原価を約17億ドル(既発表の9億ドルの非経常の訴訟和解費用を含む)、研究開発費を従来の約29億ドルから約27億ドルへ引き下げ、販売管理費は約10億ドルで据え置いた。設備投資は従来の2〜3億ドルから約2億ドルへ。年末時点の現金・投資残高は、従来の47〜52億ドルから81〜83億ドルへと大幅に引き上げた。会社は、オペレーションの改善と転換社債による調達を理由に挙げている。この見通しには、クレジットファシリティの未使用枠約9億ドルからの追加引き出しは含まれていない。

5製品目の承認と、メラノーマ第3相の結果

事業面では、8月に季節性インフルエンザワクチン「mFLUSIVA」が米FDAの承認を取得した。50〜64歳の成人が対象で、65歳以上には迅速承認。同社にとって世界で5製品目の承認品目となる。ただし承認が年次の契約サイクル後だったため、2026〜2027年シーズンの米国での立ち上げは限定的なものとなる。カナダでも承認を得た。

インフルエンザ/コロナ混合ワクチン(mRNA-1083)は、EUで「mCOMBRIAX」として承認された後、カナダで「mCOFLU」として承認。日本、英国、オーストラリアを含む追加市場では審査中で、米国での再申請についてはFDAからの追加のガイダンスを待っている状態だという。ノロウイルスワクチン(mRNA-1403)は第3相の中間解析で早期成功の統計的基準を満たさず、今シーズンの追加コホート開始は見送る。

がん領域では、10月のESMO 2026でメルクとの共同開発品インチスメラン・オートジーン(mRNA-4157)の第3相INTerpath-001試験の結果を発表した。切除後の高リスクメラノーマで、キイトルーダ単剤に対し、併用は再発または死亡リスクを42%(HR=0.58)、遠隔転移または死亡リスクを38%(HR=0.62)低下させた。事前規定の感度解析では、免疫化レジメン完了後の6カ月以降で再発・死亡リスクを58%低減(piecewise HR=0.42、95%CI 0.30-0.58)している。両社は規制当局への申請と、承認を前提とした上市準備を進める。希少疾患では、プロピオン酸血症(mRNA-3927)の登録試験が目標組み入れ数に到達し、重要データは2026年中に見込まれる。

読み方

今回の数字が示すのは、売上の伸びをコスト削減と同時に実現したという構図である。研究開発費が27%減る一方で29%の増収となり、損益が3億6,200万ドル分改善した。感染症領域の後期試験の終了が費用減の背景にあることを考えると、収益構造の改善は一時的な節約ではなく、パイプラインの重心がコロナ・インフルエンザのワクチンから腫瘍・希少疾患へ移る過程で生じたものと読める。

年末現金見通しの47〜52億ドルから81〜83億ドルへの引き上げは、その移行を支える資金の裏付けが整ったことを意味する。10月28日のGSKとの和解では、感染症分野の特許クロスライセンスを相互に許諾し、いずれの当事者も支払い義務を負わない。訴訟リスクの一つが金銭負担なしで解消された形だ。日本の関係者にとっては、審査中のmCOFLUの行方が当面の着目点になる。