2026年8月26日、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会が開かれ、関係業界から意見聴取が行われた。日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)の三団体が合同で提出した資料では米国のMFN政策が日本での医薬品開発・上市判断に及ぼしている影響についての結果が示されている。

この日の薬価専門部会は、2027年度の中間薬価改定に向けた業界ヒアリングとなっている。
7月8日の中医協総会では薬価専門部会の提案に沿って中間年改定を実施する方針が了承されているが改定対象品目の範囲や適用ルールについては診療側委員と支払側委員の意見が対立しているため業界へのヒアリングを実施するとしていた。

製薬三団体が求めているのは大きく2つとなっている。
1.     2027年度薬価改定について特許期間中の製品に対する薬価引下げは行わないこと、そして市場実勢価と連動しない薬価引下げルールは実施しないこと
2.     米国のMFN価格政策を踏まえ、必要な薬価上の対応を早急に検討・実行すること。具体的には新薬の初収載時のイノベーション評価のあり方及び外国価格との均衡を図るルールの見直し、および特許期間中の医薬品の薬価維持を妨げる制度(市場実勢価改定、市場拡大再算定、持続可能性特例価格調整、費用対効果評価制度など)の見直し・凍結となっている。

参考資料としてGDP-PPP調整後の米国価格と各国の薬価比較が掲載されている。日本は調整前は他国と比べて最安水準だが、調整後はフランスやドイツと同水準となっている。とはいえ、米国メディケイドのネット比較と比較して半分程度の価格となっている。

PhRMAが実施した調査では加盟全15社に対して、MFN価格政策を受けて日本国内での薬価収載・上市に関し、グローバル本社と具体的な協議を実施した製品があるかを聞いている。10社があると答え、対象は41製品となっている。協議の中では薬価の見直しや日本における収載・上市の見送り・遅延が議論されている。

それ以外にも日本国内の新薬開発や薬事戦略への影響も聞かれており、影響があったと答えたのが6社で、国内承認申請時期の遅延発生(見込を含む)が3社、国内研究開発予算の減少(見込を含む)が2社、国内開発の決定を保留したり開発着手を延期した製品があるが1社となっており、MFN政策の影響を受けている。

MFN政策を受けた日本での協議・開発への影響
MFN政策を受けた日本での協議・開発への影響(PhRMA加盟全15社への影響調査(2026年7月)をもとに筆者作成)

なお、ミクスの記事では当日の書き起こしも公開されている。

https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=80757

MFNについては支払側委員と製薬業界の間で激しい主張の応酬が見られている。支払側は、日本には世界に冠たる国民皆保険制度が存在し、患者が一定の自己負担で最善の治療を受けられるという独自の医療制度背景があることを強調し、単純な国際価格比較による薬価引き上げ論やMFN政策が即座にドラッグ・ラグ/ロスに直結するという業界側の主張に対して慎重な姿勢を示している。
これに対し、PhRMAはGDP-PPP調整後の価格においても日本の薬価は平均として参照国の中で低い方に位置し、製品によっては参照される下から二番目の価格になり得るとしている。さらに2025年4月から2026年3月の外国価格に基づいて2027年1月から12月のMFN価格が決定されるという具体的な話を出しており、今後日本の価格引き下げが米国価格に悪影響を及ぼす実例が確実に出てくることを訴えている。

私見だが、この書き起こしを見ていても、製薬側は“薬が日本に届けられなくなるリスクとその対応策”を話しているが、支払い側は”(導入・承認されることが前提で) 届いた薬をどう安く抑えるか”を話しており、本質的に話が噛み合っていない。