7月10日、ドイツ連邦議会は製薬企業への強制値引き(mandatory rebates)を7%から15.5%へと2倍以上に引き上げる法案を可決した。
この法案は医療改革法案(health insurance reforms)であり、内容は処方薬の自己負担引き上げや、夫婦の保険適用条件の厳格化など多岐にわたる。その中で製薬企業にとって大きいのは、ブランド医薬品の希望小売価格に対して製薬企業が支払う義務のある強制値引き(mandatory rebates)率を、従来の7%から15.5%へと引き上げる措置となっている。
一方で、業界にとってプラスになっているのは当初案に含まれていた変動リベート制度が撤回されていることとなる。変動リベートはドイツ連邦議会が長期的に定期的な追加収入を生み出すことを意図したものと説明していたが、業界の反発を受けて6月中旬に撤回されて固定値引きへ一本化されている。

この改革により、ドイツは法定健康保険システム全体で2027年に163億ユーロ(186億ドル)、2030年までに最大381億ユーロ(435億ドル)の費用削減を見込んでいる。
https://www.fiercepharma.com/pharma/germany-backs-plan-install-variable-discount-pricing-drugs

ドイツ製薬工業会(VFA)は、法案可決の直後に強く反発する声明を発表している。VFAは、この保険改革が“研究基盤型の製薬産業と、ドイツにおける医療提供に重大な負担をもたらす”と述べており、“議会審議の過程で製薬企業にとっての主要な負担は軽減されるどころかむしろ強化された”“他の利害関係者が一定の緩和を受けた一方で、製薬業界への負担は複数の分野で増加することになる”としている。
VFAの試算によれば、15.5%の固定値引き率により業界全体への負担額は当初想定されていた11億ユーロから、2027年単年だけで約32億ユーロへと急増するとしている。同団体はまた、価格数量規制(price-quantity regulation)や、ワクチンに対する値引きの引き上げについても、個別に懸念を表明している。
https://www.vfa.de/de/gesundheit-versorgung/bstabg-bedroht-innovation-versorgung-standort

この改革に関してはすでに製薬企業の投資判断に繋がっており、今年前半イーライリリーとベーリンガーはこの改革に含まれる薬価値引きを理由に、ドイツ国内で計画していたそれぞれの投資を縮小すると発表している。
https://www.fiercepharma.com/pharma/lilly-boehringer-plan-slash-investment-germany-report
ドイツは、その迅速な保険償還の仕組みからEU域内で新薬が最も早くローンチされ得る市場の一つになっている。そのため、値引き率の引き上げはEU全体での価格参照や上市戦略にも波及することとなる。
ドイツはMFNプレッシャーの中で保険財政の健全化を優先する選択をしているため、これが今後の医薬品の発売にどう影響するか、そして日本も含めて他国の決断にどう影響を与えるかが注目される。