2026年9月13日、世界肺癌学会(WCLC 2026)で第一三共とアストラゼネカの主力品であるエンハーツをHER2変異非小細胞肺がんの1次治療に用いた第3相(DESTINY-Lung04)試験の主要解析が発表された。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は達成し、中央値は14.3か月で対照群の8.3か月を6か月上回ったとしているが、全生存期間(OS)の中間解析では、エンハーツ群の中央値が29.3か月と、対照群の33.1か月を下回る結果となった。
企業のリリースでは主要評価項目であるPFSを中心に解説しているが、FiercePharmaはOSに注目して” Increased deaths shadow AstraZeneca, Daiichi’s Enhertu first-line lung cancer data”というタイトルで記事を出している。
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202609/20260914_J.pdf
https://www.fiercepharma.com/pharma/higher-death-risk-shadows-astrazeneca-daiichi-enhertu-first-line-lung-cancer-data
DESTINY-Lung04試験ではアジア、欧州、北米の複数施設で454例を組み入れ、エンハーツ5.4mg/kg単剤群と、プラチナ・ペメトレキセド併用化学療法+ペムブロリズマブ群に1対1で割り付けている。トップライン結果はすでに2026年8月17日に公表されており、「主要評価項目で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した」「安全性については新たな懸念は認められなかった」と述べられており、翌18日には第一三共株は反発している。その際には、OSを含む副次評価項目は継続して評価するとされ、それがWCLC 2026で発表されたこととなる。
https://daiichisankyo.us/press-releases/-/article/enhertu-demonstrated-statistically-significant-and-clinically-meaningful-improvement-in-pfs-as-first-line-treatment-of-patients-with-her2-mutant-advanced-nsclc-in-destiny-lung04-phase-3-trial
https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2026/enhertu-improved-pfs-in-1l-her2m-lung-cancer.html
OSの中央値は、エンハーツ群29.3か月、対照群33.1か月で、この時点で組み入れ患者の213例(46.9%)が死亡しており、内訳はエンハーツ群115例(50.7%)、対照群98例(43.2%)だった。予備的な解析ではエンハーツ群は15%高い死亡リスクを示している。
この解析は、試験が主要評価項目であるPFSを達成した時点で行われたもので、OSは正式な検定に至っておらず、企業リリースでは“十分なフォローアップ期間に達していない”とされている。
OSの結果要因としては後治療におけるHER2標的薬の使用状況の違いが述べられている。この試験では割り付けられた治療を中止した患者のうち、両群とも約72%が何らかの後治療を受けているが、その中でHER2標的薬を受けた割合は、エンハーツ群39%に対し対照群72%だった。

つまり、対照群の患者は化学療法+ペムブロリズマブで進行した後にエンハーツを含むHER2標的薬へ移行できるが、エンハーツ群は1次治療ですでにHER2標的薬を使用しているため治療選択肢が異なり、それがOSに影響した可能性があるとされている。
もう一つの要因として、薬剤関連死亡の差があるとされ、薬剤関連間質性肺疾患(ILD)または肺臓炎がエンハーツ群で20.8%に発生している (対照群は2.3%)。その中でGrade 5、すなわち死亡に至った事象が、エンハーツ群で4例あった。
PFSで優越性を示しながらもOSがネガティブな場合、FDAとの協議は難しくなる可能性があり、FiercePharmaによると近年の例としてNovartisは前立腺がん治療薬PluvictoのFDA申請をより包括的なOSデータが出るのを待たされ、RocheはColumviの適応拡大申請をOSデータを理由に拒否されたとされている。
https://www.fiercepharma.com/pharma/fda-rejects-roche-columvi-earlier-diffuse-large-b-cell-lymphoma-over-lackluster-us-data
https://www.fiercepharma.com/pharma/novartis-finally-ready-pluvicto-filing-earlier-prostate-cancer-patient-survival-data-clear