米イーライリリーは2026年10月29日、2026年第3四半期(7〜9月)の決算を発表した。売上は243.97億ドルで前年同期比39%増え、通期の売上予想も中央値で55億ドル引き上げた。牽引したのは、同じ有効成分チルゼパチドを使う糖尿病薬マンジャロと肥満症薬ゼップバウンドとなっている。

https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lilly-reports-third-quarter-2026-financial-results-raises-full

1 決算の概要

7〜9月の売上は243.97億ドル(39%増)、営業利益は86.08億ドル(17%増)、純利益は64.51億ドル(16%増)、1株あたりの利益は7.22ドルだった。

売上と利益の伸びに差が出た主な理由は、外部から取得した開発品の費用で、7〜9月の費用はは41.81億ドルで、前年同期の6.56億ドルから大きく増えている。主に、治療抵抗性うつ病の薬を開発するAtaiBeckleyと、帯状疱疹ワクチンを開発するCurevoの買収が影響している。営業利益率は35.3%で、前年同期より6.5ポイント下がっている。

2 価格を下げて数量で伸ばす

売上の39%増はを数量と価格で要素分解すると違いがはっきり出る。数量がグローバルで53%増えているのに対して、価格は15%減っている。地域別に見ると、価格・数量・為替がどう影響するかはっきりしている(図1)。

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図1 地域別の売上の増減要因(2026年7〜9月)

米国の売上は151.36億ドル(34%増)で、数量が41%増え、価格が7%下がった。ロイター通信は、米国の価格の下落は主にゼップバウンドによるものだとしている。米国外の売上は93億ドル(47%増)で、数量が76%増え、価格は29%下がった。米国外の価格の下落は主に、マンジャロが中国の公的医療保険の対象薬リスト(NRDL)に加わったことによる。とはいえ、中国の売上は9.47億ドルで69%増えている。

日本の売上は6.48億ドルで16%増だった。価格が10%、円安によるドル換算の目減りが10%押し下げたが、数量が36%増え、為替の影響を除いた伸びは26%だった。

3 マンジャロとゼップバウンド

マンジャロの7〜9月の売上は107.23億ドル(65%増)、ゼップバウンドは53.52億ドル(49%増)で、2製品で売上全体の約3分の2を占めている(図2)。マンジャロは米国が50億ドル(41%増)、米国外が57億ドル(93%増)で、米国外が米国を上回っているのに対して、ゼップバウンドは米国が53億ドル(48%増)で、米国外は0.86億ドルだった。

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図2 マンジャロとゼップバウンドの四半期売上

説明会資料によると、米国のインクレチン製剤の市場は7〜9月に32%拡大し、処方数のシェアはリリーが63.0%、ノボノルディスクが36.6%だった。米国外の売上ベースのシェアはリリーが58.4%である(図3右)。

4 メディケアBridgeとFoundayo

米国では2026年7月から、高齢者向けの公的保険メディケアで肥満症薬を使えるようにする暫定制度「GLP-1 Bridge」が始まった。説明会資料によると、Bridgeでリリーの肥満症薬を使う患者は50万人を超え、その80%はインクレチン製剤を初めて使う人だった。Bridgeで新たに治療を始めた患者の10人に7人がリリーの薬を選び、リリー製品の月間処方数は7月の22.2万件から9月の52.7万件に増えている(図3左)。ロイター通信は、メディケアの患者の自己負担が月50ドルである一方、リリーの自費購入サイトの価格は月449ドルだとしている。

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図3 メディケアGLP-1 Bridgeでの処方数とインクレチン製剤市場のシェア

経口のGLP-1受容体作動薬Foundayo(一般名オルホルグリプロン)の7〜9月の売上は1.84億ドルだった。1〜9月の累計は2.81億ドルなので、4〜6月の約0.97億ドルからほぼ倍増している。会社によると、米国の新規処方に占めるシェアは、9月末時点で約40%に達した。英国、メキシコ、サウジアラビア、UAEで発売し、40か国以上で審査中となっている。一方、ロイターによると、Foundayoの7〜9月の売上はLSEGがまとめた市場予想(2.17億ドル)を下回り、米国での初期の処方数はノボの経口ウゴービに及ばない。

Foundayoについては、2型糖尿病の患者を対象に、インスリン グラルギンと比べた第3相試験(ACHIEVE-4)の結果も示された。主要な心血管イベントのハザード比は0.84で、グラルギンに劣らないことを示した。

https://www.investing.com/news/stock-market-news/eli-lilly-lifts-revenue-outlook-on-weightloss-drug-sales-trims-profit-view-on-deal-charges-4982615

5 通期予想の修正

リリーは2026年通期の売上予想を、850億〜870億ドルから910億〜920億ドルに引き上げた。会社が独自に示す調整後の営業利益率(Performance Margin)の予想も、49.0〜50.5%から52.0〜52.5%に上げた。一方、調整後1株利益の予想は35.50〜36.50ドルから35.00〜36.00ドルに下げた。会社の説明では、本業の上振れで中央値が4.07ドル上がったが、7〜9月の買収による増加コストによる4.57ドルの押し下げがそれを上回った(図4)。

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図4 2026年通期の調整後1株利益予想の修正

6 パイプラインと買収

次世代の肥満症・糖尿病薬では、三つのホルモン受容体に作用するレタトルチドが、2型糖尿病の患者を対象にオゼンピック(2mg)と直接比べた第3相試験(TRANSCEND-T2D-2)が発表されており、80週時点で、体重は9mg群で20.9%、12mg群で19.5%減り、オゼンピック群の9.4%を大きく上回った。HbA1cの低下は9mg群、12mg群とも2.2%で、オゼンピック群は1.8%だった。副作用による治療中止は5〜8%で、オゼンピック群の3%より多かった。ロイターによると、リリーはレタトルチドを来年申請する予定となっている。

肥満症以外では、前回の決算発表以降、乳がん治療薬Inluriyo(Verzenioとの併用)、血液がん治療薬Jaypircaの初回治療への適応拡大、週1回の基礎インスリンOnswikなどが米国で承認された。会社が重点製品とする製品群の売上は171億ドルで62%増え、このうち免疫、がん、神経の領域の重点製品は100%増えている。アルツハイマー病薬キスンラは1.93億ドル(175%増)、アトピー性皮膚炎治療薬Ebglyssは2.02億ドル(59%増)だった。

買収では、AtaiBeckleyの買収を7〜9月に完了しており、7月の発表によると一時金は1株6.75ドルで総額約28億ドル、開発のマイルストンに応じた追加の支払いを含めると最大38億ドルとなる。その後、自己免疫疾患とアレルギー疾患の治療薬を開発するMerida Biosciencesの買収も完了している。