米イーライリリーが2026年5月26日、ワクチン・感染症の新興企業3社を、総額最大約38億ドル(約6,000億円)で買収すると発表した。GLP-1で大きく伸びる同社はそこで得た利益を元に買収を進めており、がん・自己免疫・睡眠障害などの企業を買収してきた。
今回のワクチンは既存のFocus領域というよりも過去の領域への再参入となり、各種記事でもそのように表現されている。
リリー社は元々感染症領域が主力の1つであったが、他の大手製薬が抗生物質R&Dから一斉に退出した時期に撤退している。感染症領域は研究の時間がかかるわりに経済的に報われないと認識されていた。そして2019年、残っていたレガシー抗生物質(セクロル、バンコシン)と中国の生産拠点まで売却し、感染症事業から撤退している。

今回買収した3社はそれぞれ異なる病原体をターゲットにしている。
帯状疱疹ワクチンのCurevoはアメゾスバテインが主力候補で、第2相で既存の標準治療(GSKのシングリックスと直接比較し、免疫応答は同等を保ちながら、副作用(活動を制限するほどの疲労・悪寒・注射部位の痛みなど)が半分以下となっている。帯状疱疹は脳卒中リスクの上昇と関連し、その予防接種は認知症リスクの低下と関連するとされるため、忍容性の高いワクチンが普及すればこうした長期リスクも人口レベルで下げられるとしている。
LimmaTech Biologicsは抗菌薬耐性(AMR)で治療選択肢が狭まる細菌を標的とする。主力LTB-SA7は、手術部位感染の最大要因である黄色ブドウ球菌のワクチン(第1相)。淋菌やクラミジアなど、不妊など長期的な影響をもたらす細菌も視野に入れる。
Vaccine Companyは、独自のIVN(体内ナノ粒子)技術を持ち、主力はEBV(エプスタイン・バーウイルス)ワクチンとなる。EBVは多発性硬化症や複数のがんとの関連が指摘されており、予防できれば急性症状だけでなく長期の神経・腫瘍リスクを減らせることが期待される。
GLP-1が肥満症を改善して様々な慢性疾患の予防につながるように、今回のワクチンも含めて同社は予防領域への注力を高めていると思われる。
今回買収した3社の製品はいずれも前臨床〜第1・2相の段階であり、製品として結実するか今後の開発マイルストンが注目される。