2026年8月31日、トランプ大統領が9社の製薬企業と新たに最恵国待遇(MFN)価格に関する合意を結んだと発表した。これでMFN合意企業は26社となり、政権はブランド医薬品市場の89%をカバーすると説明している。

2025年5月にMFN政策の大統領令が署名され、同年7月31日に大手17社へ書簡が送付され、この17社はすべてMFN合意に署名している。
今回追加されたのは、Alcon、アステラス製薬、BeOne Medicines、BridgeBio、CSL、協和キリン、Sun Pharma、Teva Pharmaceuticals、UCBの9社で、もともと中堅企業(mid-sized companies)が新たに追加されることは予告されていた。アステラスと協和キリンは日系企業として初めてMFN政策に合意したこととなる。

https://www.fiercepharma.com/pharma/trump-set-reveal-mfn-pricing-deal-mid-sized-companies-bloomberg

MFN合意企業26社の分類:先行の大手17社と、今回追加された中堅9社(アステラス製薬・協和キリンを含む)
MFN合意企業26社の分類:先行の大手17社と、今回追加された中堅9社(アステラス製薬・協和キリンを含む)(筆者作成)

対象疾患は血友病、パーキンソン病、黄斑変性、緑内障、肝疾患、皮膚疾患、各種のがんなど、費用が高額な慢性疾患や希少疾患で、政権によればこの合意によって全米のすべての州のメディケイドが9社の製品についてMFN価格でアクセスできるようになり、数十億ドル規模の節約につながると説明している。

今回の合意では価格に関する約束だけではなく、9社は合計で196億ドル以上の米国内製造投資を近い将来に行うと約束し、かつ複数の企業が主要製品の原薬を戦略的原薬備蓄(SAPIR: Strategic Active Pharmaceutical Ingredients Reserve)へ寄贈することにも合意している。

UCBは抗てんかん薬レベチラセタムを163トン、Sun Pharmaは抗菌薬クリンダマイシンを71.4トンとドキシサイクリンを6.75トン、Tevaは抗菌・抗原虫薬メトロニダゾールを45トン、降圧薬アムロジピンを4.8トン、アステラス製薬は、臓器移植後の拒絶反応を防ぐ免疫抑制薬タクロリムスを25キログラム拠出するとしている。

戦略的原薬備蓄への拠出内容:UCBのレベチラセタム163トンが最大、アステラス製薬のタクロリムスは25kg
戦略的原薬備蓄への拠出内容:UCBのレベチラセタム163トンが最大、アステラス製薬のタクロリムスは25kg(筆者作成)

戦略的原薬備蓄(SAPIR)は、第1次トランプ政権下の2020年に創設された仕組みで、完成品の医薬品ではなくその原料である原薬を備蓄することとなる。
ただし、PharmExecの記事ではは専門家の見解として「メディケイドにおける患者の自己負担には大きなインパクトはなく、メディケイドにおけるこれらの任意の合意では影響はもっぱら製造業者に及ぶ (There's not an impact on patient out-of-pocket costs or patient access, necessarily. In the Medicaid program with these voluntary deals, the impact is felt squarely on the manufacturers specifically」とされている。
メディケイドは低所得者向けの公的医療保険で加入者の自己負担は元々低いため、今回の合意で価格が下がるのは州のメディケイドが製薬企業から購入する際の価格となる。