2026年8月19日、モデルナとメルクが、個別化mRNAがん治療薬インティスメラン・オートジーンの第3相試験(INTerpath-001試験)で主要評価項目を達成したと発表した。悪性黒色腫の術後補助療法として、キイトルーダとの併用が単剤を上回ったという内容。個別化ネオアンチゲン療法として、また、mRNAがん治療として初めての第3相成功となる。この日モデルナ株は176.97%上昇し、時価総額は250億ドルから690億ドルへ跳ね上がった。ただし両社は、具体的な数値を一切公表していない。
https://www.fiercebiotech.com/biotech/merck-and-modernas-personalized-cancer-vaccine-slows-recurrence-ph-3-trial
https://clinicaltrials.gov/study/NCT05933577
INTerpath-001試験には皮膚の悪性黒色腫を外科的に完全切除した患者 (病期はステージIIBからIVで全身療法の治療歴がない) 1,137例が組み入れられており、3分の2がインティスメランとキイトルーダの併用を、残りがキイトルーダ単剤を受けている。
プレスリリースによれば主要評価項目である無再発生存期間(RFS)と、副次評価項目である遠隔転移なし生存期間(DMFS)の双方で、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善が得られたとのこと。新たな安全性への懸念は確認されていない。
ただ、これは事前に規定された中間解析の結果でありそれ以上の情報はなく、全生存期間(OS)を評価するため試験は継続される。今後の国際学会で詳細なデータが発表され規制当局と申請について協議することとなる。
https://www.ajmc.com/view/moderna-merck-mrna-cancer-vaccine-succeeds-in-late-stage-trial
この発表を受けてモデルナ株は174.38ドルまで上昇し、前日比176.97%高となり同社の上場来最大の単日上昇率となった。時価総額は250億ドルから690億ドルへと、1日で440億ドル増えた計算になる。
インティスメランを投与する際には、まず患者の腫瘍を外科的に切除し、その組織に対して全エクソームシーケンスとRNAシーケンスを行う。次に機械学習のアルゴリズムがその患者の腫瘍に固有の変異を解析し、最大34個のネオアンチゲン(がん細胞の変異によって生じる異常なタンパク質)を標的として選定する。そして、その34個をコードする合成mRNAが、その患者専用に製造される。初期の試験では、ネオアンチゲン設計が成功した患者について、製造成功率は99%を超えたと報告されている。
がんワクチンという呼称ではあるが、健康な人に接種して発症を防ぐものではなく、既にがんを発症した手術を受けた患者の再発予防となる。

このような個別化ワクチンが承認された場合、製造オペレーションは個別化のため煩雑になると思われ、原価やそれに伴う薬価が高くなるものと予想される。今後日本でも承認を狙う場合、通常ワクチンは自由診療だが、今回は再発予防であり保険適応を狙うと予想され、その中で果たしてオペレーションを賄える十分な薬価が付くのかが今後の論点になる。

両社はインティスメランを、黒色腫のほか肺がん、膀胱がん、腎がん、膵がん、胃がんなど、9本の第2相・第3相試験で開発を進めているため、今回のINTerpath-001試験の結果の詳細を経て、他の疾患に対する効果がどのようになるかが注目される。