2026年8月7日、FiercePharmaが調査会社iSpot.TVのデータをもとに7月の米国における医薬品TV広告出稿ランキングを報じており、内容が興味深い。
米国は数少ないDTC広告(患者への医薬品の直接広告)が可能な国であるため、この広告出稿金額はすなわち各製薬会社のブロックバスターへの力の入れ方を示す。
https://www.fiercepharma.com/marketing/abbvies-skyrizi-back-leading-drug-pharmas-ad-spending-league-july

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iSpot.TVの推計によれば、7月の全米TV広告出稿額の首位はAbbVieのスキリージで2,930万ドル(約47億円、以下1ドル160円で換算)となっている。6月の2,330万ドル(約37億円)から600万ドル(約10億円)増やしており、対照的に2位はJ&Jのトレムフィアは2,700万ドル(約43億円)で6月の3,660万ドル(約59億円)から960万ドル(約15億円)減らしている。
3位はJ&Jの非定型抗精神病薬キャプライタで2,460万ドル(約39億円)。6月から1,000万ドル(約16億円)増やし、2つ順位を上げている。AbbVieのもう一つの主力リンヴォックは2,350万ドル(約38億円)で4位に。5位には、TV広告では珍しくがん治療薬であり、Merckのキイトルーダで1,480万ドル(約24億円)でラインクインしている。がん治療薬の多くは、専門医が処方を判断する性質上、患者向けのTV広告を大々的に打つことは少ないため、記事ではこれを”a highly unusual place for the drug as most cancer therapies are not widely advertised on TV”と論じている。

このランキングでは各薬剤の最大出稿先番組も出しており、面白い。ランキングに入っているスキリージ、トレムフィア、キャプライタ、キイトルーダ、ゼップバウンド、イコタイドの6剤がFIFAワールドカップ2026を出稿している中で最大のシェアとしている。2026年のワールドカップは米国・カナダ・メキシコの共催であり、開催国であるアメリカの視聴者を直接ターゲットとして狙え、かつ4年に一度の機会であるため集中的に広告費を投じたと思われる。特にイコタイドは46.13%と、広告額の半分弱をワールドカップに投資している。

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このランキングを企業単位としてもまた面白い。トップ10のうち、AbbVieはスキリージ(1位)、リンヴォック(4位)、ボトックス(8位)の3剤を、J&Jはトレムフィア(2位)、キャプライタ(3位)、イコタイド(7位)の3剤をランクインさせている。
合計出稿額を見ると、AbbVieが6,410万ドル(約103億円)、J&Jが6,300万ドル(約101億円)。その差はわずか110万ドル(約1.8億円)で拮抗している。かつ、スキリージ・リンヴォックとトレムフィアは乾癬やIBDなどの免疫疾患で直接競合する関係でもある。

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適応別の内訳を見るとスキリージの2,930万ドルは、乾癬に1,600万ドル(約26億円)、UC/クローン病に1,150万ドル(約18億円)、乾癬性関節炎に180万ドル(約3億円)と配分されている。対するトレムフィアの2,700万ドルは、UC/クローン病に1,620万ドル(約26億円)、乾癬性関節炎に890万ドル(約14億円)、乾癬に180万ドル(約3億円)。スキリージが乾癬に厚く配分する一方、トレムフィアはUC/クローン病に最も多くを投じている。

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ちなみに、あまり意味のない比較だが、この広告費用が日本の製薬市場から見るとどのくらいの大きさなのかについて。例えばAbbVieが7月に投じた6,410万ドル(約103億円)を単純に12倍すると、日本円で約1,231億円。
この金額は2025年度の国内医療用医薬品売上高で4位レベルとなり、そのレベルの金額をUS市場の広告費用として投じているということになる。米国市場が桁違いということがわかる。