2026年9月10日、厚生労働省とPMDAが、米FDAの主導する抗がん剤の国際共同審査プログラムProject Orbisに正式参加することを決定した。
日本はこのプロジェクトにはオブザーバーとしてすでに2022年に参加しているため、そこから4年を経て正式に参加したこととなる。
参画によりFDA等の海外薬事規制当局と新規抗がん剤に関する薬事審査における情報交換をより密接に行うことが可能となり、日本での抗がん剤の開発の促進、FDAとのProject Orbis対象品目の審査協働を進めることでのドラッグラグ・ロスの解消を目指すとしている。
Project Orbisは、米FDAのOncology Center of Excellence(OCE)が2019年5月に開始した枠組みで、定義は「国際的なパートナー間での抗がん剤の同時申請および同時審査のための枠組み」となっている。
従来、各国の規制当局は自国での承認申請を待ってから審査を開始するため、製薬企業はまず米国で申請することが多く、審査もそれぞれの国で行われる。Project Orbisは製薬企業がFDAと参加国へ同時に申請し、FDAの審査資料や評価を共有しながら、各国が並行して審査を進めることが可能となる。
(ただし、承認の判断そのものは各国が独自に行う)
https://www.fda.gov/about-fda/oncology-center-excellence/project-orbis

このプロジェクトは申請時期に応じて、3つのタイプに分かれる。
Type Aは、FDAへの申請から30日以内に参加国へ申請するもので、完全な並行審査となる。参加国はFDAの審査を通じた多国間会議に参加し、同時に承認判断を行うことも可能となる。
Type B(Modified Orbis)は、30日を超えて参加国へ申請するもので、参加国はFDAの審査報告を受領し、確認事項を交換して一部の多国間会議に参加することとなる。並行審査や重複する審査の可能性はあるが、Type Aと比べると限定的となる。
Type C(Written Report Only Orbis)は、FDAが既に承認判断を下した後の申請となり、FDAは完了した審査文書を参加国と共有するが、並行審査や同時決定は行われない。
2020年に発表された初期の実績分析によれば、FDA申請から参加国への申請までの時間差の中央値はType Aで0.4か月、Type Bで2.7か月、Type Cで5.5か月となっていた。その中でも、Type Aの申請の90%はFDA申請から1.1か月以内に行われている。
https://aacrjournals.org/clincancerres/article-pdf/26/24/6412/2064683/6412.pdf

開始時の参加国は、米国、オーストラリア(TGA)、カナダ(Health Canada)の3か国のみだったとのこと。最初の審査対象は、進行子宮内膜がんに対するペムブロリズマブとレンバチニブの併用療法で、2019年9月17日にFDAはTGAおよびHealth Canadaと同時に迅速承認を行っている。
2019年12月にシンガポール(HSA)とスイス(Swissmedic)が加わり、その後ブラジル(ANVISA)、英国(MHRA)、イスラエルが参加している。
Project Orbisを通じた実績は2025年半ば時点で申請が累計633件、対象製品は79製品となっている。FDAにおける承認までの中央値は4.2か月で、優先審査の6か月、通常審査の10か月よりも短くなっている。また、2020年の初期分析ではFDA(4.2か月)と参加国(4.4か月)の承認期間はほぼ同等となっていた。
https://qualiabio.com/resources/clue-cards/fda-project-orbis
日本と同様に、途中から参加した国にスイスがあるが、2024年にLancet Oncologyに掲載された比較分析ではSwissmedicの2020年から2022年のデータを用いてProject Orbis参加の効果が検証されている。
FDA申請からSwissmedic申請までの時間差の中央値は、Project Orbis参加前の168日から参加後は33日に劇的に短縮されている。また、Swissmedicの審査期間の中央値は、314日から235.5日で約79日短くなっている。
https://intuitionlabs.ai/articles/project-orbis-fda-cancer-review-times

今回の正式参加により厚労省はFDAとのProject Orbis対象品目の審査協働を進めるとしており、FDAと日本への同時申請や審査の効率化・早期承認などが期待される。
一方、対象は抗がん剤に限られ、かつ承認後の薬価収載は別の話であるため、本当にドラッグラグやロスの解決につながるかどうかは疑問が残る。