米Revolution Medicinesは2026年11月4日、膵がん治療薬Rasonque(一般名daraxonrasib)の7〜9月の売上が1億9,760万ドル(約314億円)だったと発表した。8月26日に米食品医薬品局(FDA)の承認を受けてから約5週間分の売上のみでの数字。BioPharma Diveによると、投資家の事前の予想は5,000万〜1億ドル(約80億〜159億円)でそれを遥かに上回っており、アナリストはがん領域で史上最高の上市(best cancer drug launch in history)と評している。

https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1628171/000119312526447193/rvmd-ex99_1.htm
https://www.biopharmadive.com/news/revolution-rasonque-sales-3q-2026-pancreatic-cancer/873839/

1 承認と発売

Rasonqueは、1日1回服用の錠剤で、承認の根拠となった第3相試験は転移性膵がんでは全生存期間を大きく伸ばしておりASCOでも話題になっていた。

FDAが承認している効能対象は、全身療法を1回以上受けた転移性膵がん(膵管腺がん)の成人と、多剤を組み合わせた化学療法を受けられない成人。Revolution Medicinesは承認の直後に米国で発売し、30日分の卸売価格を39,800ドル(約633万円)としていた。12か月分に換算すると約47.8万ドル(約7,600万円)。

承認後、米国の診療ガイドライン(NCCN)は、既治療の膵がんに対する推奨度の高い選択肢(カテゴリー1、Preferred)にRasonqueを加えており、未治療の転移性膵がんについても、患者の全身状態によっては特定の状況で有用な選択肢として載せている。

https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1628171/000119312526366931/rvmd-20260826.htm

2 臨床試験の結果

承認の根拠となる第3相試験RASolute 302は既治療の転移性膵がんの患者500人を対象に、Rasonqueと医師が選ぶ化学療法比べており、全生存期間の中央値は、試験全体でRasonqueが13.2か月、化学療法が6.7か月で、死亡のリスクを60%下げた(ハザード比0.40)。1年時点の生存率は、主要評価項目の対象であるRAS G12変異の患者で53.3%対18.7%だった。無増悪生存期間の中央値は7.3か月対3.5か月であ理、副作用による治療の中止は1.2%で、化学療法の11.2%を下回っていた。(図1)。

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図1 第3相試験RASolute 302の主な結果

2026年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)では、RAS遺伝子の変異の種類によらず、変異が見つからなかった患者を含めて生存期間の改善が一貫していたとする追加の解析も示されている。

https://ascopost.com/news/june-2026/daraxonrasib-nearly-doubles-survival-in-previously-treated-metastatic-pancreatic-cancer/

3 発売初期の数字

7〜9月の純売上は1億9,760万ドル(約314億円)で、承認から9月30日までに5,000人を超える患者が処方を受けている。会社発表によると、膵がんの患者が加入する米国の医療保険の90%超で保険償還が行われており、BioPharma Diveの報道では処方した医師は約2,700人で、約4割が大学病院などのがん専門施設、残りは地域のがん診療所だった(図2)。

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図2 Rasonqueの発売初期の主な数字

費用の面では、7〜9月の販管費が1億5,330万ドル(約244億円)で前年同期の約3倍になり、研究開発費は4億1,710万ドル(約663億円)だった。純損失は4億750万ドル(約648億円)であった。

4 数字の読み方

会社は、7〜9月の売上には一時的な要因が含まれると説明している。一つは、承認前に薬を使っていた早期アクセスプログラム(EAP)の患者の移行、もう一つは、ほかに治療の選択肢がなく承認を待っていた患者の処方開始、さらに流通在庫の初期の積み増し。会社は、EAPからの移行と承認を待っていた患者の処方は限られた初期の動きで、7〜9月の数字を発売の長期的な推移を示すものと見るべきではないとしている。

売上を患者数で単純に割ると、1人あたり約4万ドル(約636万円)になり、30日分の卸売価格39,800ドル(約633万円)とほぼ同じ水準。

BioPharma Diveによると、アナリストの予想は、10〜12月の売上でRBCが4.26億ドル(約677億円)、TD Cowenが4.6億ドル(約731億円)。RBCは、10〜12月期末までに患者が約1万人に達し、2027年の売上は30億ドル(約4,770億円)を超えると予想している。これらはアナリストの予想で、会社は売上の見通しは示していない。

5 キイトルーダなどの初動との比較

あくまで参考程度だが、比較のため、2014〜2015年に米国で承認された大型のがん治療薬4品について、各社の当時の決算発表から発売直後の四半期の売上を拾ってグラフにしている(図3)。

メルクのキイトルーダは、2014年9月4日に、前治療で進行した悪性黒色腫を対象に迅速承認を受けた。売上は7〜9月が400万ドル(約6億円、承認から約4週間)、10〜12月が5,000万ドル(約80億円)で、メルクは2014年12月時点で約2,000人が治療を受けているとした。その後は2015年1〜3月が8,300万ドル(約132億円)、4〜6月が1億1,000万ドル(約175億円)、7〜9月が1億5,900万ドル(約253億円)、10〜12月が2億1,400万ドル(約340億円)と伸び、2015年通年では5億6,600万ドル(約900億円)だった。

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図3 大型のがん薬の発売直後の四半期売上

小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)のオプジーボは2014年12月22日に米国で承認され、2015年1〜3月が4,000万ドル(約64億円)、4〜6月が1億2,200万ドル(約194億円)、7〜9月が3億500万ドル(約485億円)だった(4〜6月は1〜9月の累計からの差し引き)。ファイザーの乳がん治療薬イブランスは2015年2月3日に承認され、1〜3月(3月29日まで)が3,800万ドル(約60億円)、4〜6月が1億4,000万ドル(約223億円)、7〜9月が2億3,000万ドル(約366億円)だった(4〜6月は同じく差し引き)。アストラゼネカの肺がん治療薬タグリッソは2015年11月13日に承認され、2015年の売上が1,900万ドル(約30億円)、2016年1〜3月が5,100万ドル(約81億円)だった。

最初の四半期の売上だけを比べると、Rasonqueの1億9,760万ドル(約314億円)は、この4品のいずれの最初の四半期を大きく上回っている。ただし、キイトルーダの最初の適応は前治療で進行した悪性黒色腫に限られ対象患者が少ない、前述のRasonqueの一時的要因、11〜12年の時間差による薬価の水準や物価の違いなどがあるため、直接比較ができるものではない。

https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/310158/000110465915006465/a15-3619_1ex99d1.htm

https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/310158/000110465916093377/a16-3346_1ex99d1.htm

https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427215000233/q32015ex991.htm
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/78003/000007800315000048/pfe-09272015xex99.htm

https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/901832/000119163816002009/azn201604296k.htm

7 今後の予定と未確定の点

欧州では、欧州医薬品庁の委員会(CHMP)が10月に承認を勧告し、欧州委員会の判断を待っている。日本でも、承認を前提に販売の準備を進めており、日本法人を立ち上げているが承認申請の状況については明らかになっていない。s