2026年6月5日、塩野義製薬が小児ADHD向けのデジタル治療アプリ「エンデバーライド」を発売した。スマホやタブレット上で乗り物を操作し、画面の対象物をタップするという、ゲームのような操作を通じて脳を刺激し、不注意や衝動性の改善が期待される国内初のADHD治療アプリとなる。医師の処方が必要ないわゆる治療アプリ(DTx)である。

エンデバーライドは、米Akili社が開発したアプリで、塩野義が日本・台湾の独占的な開発・販売権を持つ。対象は6〜17歳の小児ADHD患者。1日25分の治療を6週間続ける設計で、保険償還価格は1万4500円、その3割が自己負担となる。
DTxは「医療機器」であり、薬と同じように治験でエビデンスを示し、規制当局の承認を得て、医師の処方のもとで使う。国内では、CureAppの禁煙アプリや高血圧治療アプリがパイオニアとなっている。

DTxについては医薬品ではない治療法として期待が大きいエリアだが、先進国である米国でも苦戦を強いられることが多い分野となっている。

画像

米国でパイオニアと言われたPear Therapeuticsは不眠症や依存症で3のFDA承認製品を取得していたが、2023年に経営破綻した。また、今回のエンデバーライドの開発元であるAkiliが開発したEndeavorRxは、FDAが認めた初の“処方できるビデオゲーム”と評されており、2022年には上場も果たした。しかしその後、処方モデルが行き詰まり、市販(OTC)への転換を迫られ、人員を大幅に削減するなど縮小を余儀なくされた。

https://www.healthcare-brew.com/stories/2023/09/15/digital-therapeutics-company-akili-ditches-prescription-business-model

米国では、薬や医療サービスの支払いを、無数の民間保険(ペイヤー)が個別に判断するが、その保険者たちが治療アプリの支払いに及び腰だったとされる。長期的な有効性データが乏しく、かえって医療費(支払額)が膨らむのではという懸念が拭えなかった。
逆に日本は皆保険制度なので、償還するかどうかも含めて国が決めることになる。一度収載されれば、原則として全国どこでも保険診療として使えることになる。とはいえ、米国とは違う意味でビジネスは難しいとされる。
IQVIAのレポートでは日本では「収益性の不透明さ」があり、保険償還の有無によらず、ビジネスモデルが確立されていないことが開発の足枷となると指摘している。また、保険償還されたとしても、償還基準が不明瞭で想定より低い価格を設定される場合がある点や、患者側のPDTxへの認知度が低く導入が進まないことが課題となっている。

今回のアプリの保険償還価格は1万4500円で6週間1コースであり、1人1コースで完結することが期待されている。その価格帯で果たしてどこまで製品規模が大きくなるか、今後の発表が注目される。