2026年6月19日、米国がドイツの薬価制度を貿易上の問題として調査すると発表した。
米通商代表部(USTR)のグリアー代表は、「ドイツの革新的医薬品に対する恒常的な過少支払い」を対象に調査を始めると述べており、その理由はドイツが薬価を低く抑えることで米国がグローバルな研究開発(R&D)費の不当に大きな割合を負担させられているというもの。MFN導入の背景で述べられていたものと同一。
ここで適用されている通商法301条とは、米国の通商を害する不公正な外国の慣行に対して米国が一方的に対抗できる仕組み。対中貿易戦争でも使われており、調査の結果次第では最終的にドイツ製品への関税に発展しうる。USTRは9月22日に公聴会を開く予定で、意見書の提出期限は8月10日とされた。
調査の対象となるのはドイツの医療費抑制策で、4月に公的医療保険(GKV)の赤字に対応するため160億ユーロ超を節減する改革法案を打ち出したとされている。
GKVの赤字は2027年の153億ユーロから、2030年には404億ユーロへと約2.6倍に膨らむと予測されている。法案はメーカーへの値引き拡大を含み、これに製薬企業は強く反発している。上述のBio Spaceの記事によれば、Eli LillyとBoehringer IngelheimはGLP-1製造工場を含むドイツでの巨額投資計画を撤回し、その影響でドイツ政府は計画の一部を変更したとされる。

今回の調査は明らかに最恵国待遇(MFN)薬価政策と連動している。
RANDの分析によれば、米国の薬価は比較対象33か国の平均の2.78倍。先発
品に限れば4.22倍に達し、リベートを調整しても3倍を超える。
https://www.rand.org/news/press/2024/02/01.html

新薬の開発には巨額の費用がかかるが、その大半は高い薬価を払う米国の患者が負担している一方で、他国は価格を低く抑え開発費を十分に負担しないまま新薬を使っている。これが米国が主張する「フリーライド(ただ乗り)論」となる。
日本は既に、MFNの参照国として米国政府の文書に明記されているため対岸の記事とはならない。
すでに大手外資製薬企業を中心に、日本での価格や上市のタイミングを慎重に見直すことが報道されており、今後のMFN対策のための薬価制度改革が行われるかどうかが注目されている。