2026年8月31日、ホワイトハウスがMedicare GLP-1 Bridgeの初期実績を明らかにした。7月1日の開始以来、50万人を超える高齢者が利用し、合計で2億1,600万ドルを節約したとされる。CMS(Centers for Medicare and Medicaid Services)のメフメット・オズ長官は記者会見でわずか2か月で60万人の高齢者が既に登録したと述べており、アナリストはこの数字から年換算で15億から18億ドル(約2,340億から2800億円)の売上規模になると試算している。

https://www.fiercepharma.com/pharma/trump-glp-1-update-suggests-blockbuster-annual-sales-lilly-medicare-program-analyst
https://www.fiercepharma.com/pharma/white-house-unveils-next-round-mfn-pricing-deals-9-midsized-drugmakers

米国のメディケアは体重管理のみを目的とする医薬品を給付対象から除外してきたが、CMSは2025年12月23日にこの制約の下で運用可能な仕組みとして、短期のデモンストレーションでMedicare GLP-1 Bridgeを設計した2026年7月1日に開始し、当初は同年末までとされていたが、2027年12月31日まで延長されている。

Bridgeプログラムの初期実績:2か月で60万人登録、患者自己負担2億1,600万ドル削減、浸透率25%
Bridgeプログラムの初期実績:2か月で60万人登録、患者自己負担2億1,600万ドル削減、浸透率25%(筆者作成)

対象となる医薬品は、ウゴービ: Wegovy(注射剤と経口剤の両方)、ゼップバウンド: Zepbound (KwikPen®製剤のみ)、Foundayoの3剤。メディケアの加入者は月あたり50ドルの自己負担で入手できる。

対象治療薬(Wegovy・Zepbound・Foundayo)と、電子事前承認(ePA)による処方の4段階
対象治療薬(Wegovy・Zepbound・Foundayo)と、電子事前承認(ePA)による処方の4段階(筆者作成)

製薬企業側はCMSに対して月245ドルのネット価格で供給することに合意しており、薬局は患者から50ドルを受け取り中央処理機関に請求することとなる。CMSからの償還額は当該医薬品の卸取得価格を下回らない水準に、患者負担分を差し引き、調剤料を加えたものとなる。
https://www.cms.gov/newsroom/press-releases/cms-launches-medicare-glp-1-bridge-expanding-access-glp-1-medications
https://www.cms.gov/newsroom/press-releases/coming-soon-cms-provide-50-monthly-access-glp-1-medications-medicare-beneficiaries

加入者の要件はメディケアパートDの薬剤給付を有し、18歳以上であること、BMIおよび関連する健康状態に基づく臨床基準を満たすこと、処方は体重減少および体重維持を目的とするもので食事と身体活動を含む継続的な生活習慣の修正とともに用いられること、医師が中央処理機関に事前承認を申請することなどとなっている。
一方、対象外となるのは2型糖尿病、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸、非肝硬変性の代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の診断がある加入者で、この患者層はこれらの適応でパートDの給付を受けられるため対象外となる。つまりBridgeは、他の適応でカバーされない純粋な体重管理目的の処方に限定されている。
https://www.ahip.org/news/articles/cms-medicare-glp-1-bridge-what-to-know
https://www.cms.gov/medicare/coverage/prescription-drug-coverage/medicare-glp-1-bridge/information-providers
発表された数字によればすでに50万人超の利用して2億1,600万ドルが節約されており、アナリストの試算ではBridgeプログラム全体で15億から18億ドルの売り上げがあるとされる。そのうち肥満治療領域で先行するイーライリリーの収益が9億から12億ドルになるとしている。

医療政策研究機関KFFの推計では、今回のBridgeの対象となりうるメディケア加入者は約380万人で、現在の登録ペースが続けば、今後1-2か月で対象患者の25%に達することになる。
一方、リリーはより強気の推計を示しており、同社が示した適格なメディケア患者数は2,000万人となっている。同社のデービッド・リックスCEOは、前月の第2四半期決算説明会でMedicare Bridgeにより、米国で当社の肥満治療薬のカバレッジを持つ人が35%増えたと述べている。
ちなみにBridgeという名称は、次の制度への橋渡しを意味しており、その次の制度がBALANCEモデルとなる。BalanceはBetter Approaches to Lifestyle and Nutrition for Comprehensive hEalthの略で、CMSがメーカーと交渉してGLP-1のネット価格を引き下げ、既存の適応(糖尿病など)と拡大された適応の双方についてカバレッジを広げる仕組み。2027年1月からメディケア・パートDを対象とした開始が予定されていたが、その開始要件は満たされず、開始は延期されている。(メディケイド向けには開始されている)
https://www.cms.gov/newsroom/press-releases/cms-launches-voluntary-model-expand-access-life-changing-medicines-promote-healthier-living
https://www.cms.gov/priorities/innovation/innovation-models/balance
https://www.kff.org/medicare/what-to-know-about-the-balance-model-for-glp-1s-in-medicare-and-medicaid/

Medicare GLP-1 Bridge と Medicaid BALANCE の構造比較:対象・期間・患者負担・財務リスク
Medicare GLP-1 Bridge と Medicaid BALANCE の構造比較:対象・期間・患者負担・財務リスク(筆者作成)