決算の数字

ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J、米ニュージャージー州ニューブランズウィック)は2026年10月13日、2026年第3四半期の決算を発表した。報告ベースの売上高は254億9900万ドルで、前年同期の239億9300万ドルから5.9%増加した。為替影響を除くオペレーショナル成長率は6.0%、買収・売却の影響も除いた調整後オペレーショナル成長率は6.1%だった。

一方、GAAPベースの純利益は2億1000万ドルで、前年同期の51億5200万ドルから95.9%減少した。希薄化後EPSは2.12ドルから0.09ドルへと95.8%減った。無形資産償却費と特別項目を除く調整後純利益は63億3900万ドル(前年同期比6.8%減)、調整後希薄化後EPSは2.59ドル(同7.5%減)である。今回のリリースでは、GAAP純利益が大きく落ち込んだ内訳は示されていない。フリーキャッシュフロー(第3四半期までの累計、10月13日時点の見積もり)は約151億ドルで、前年同期の142億2600万ドルを上回った。

地域別では、米国が149億5900万ドルで9.1%増と伸びた一方、米国以外は104億4000万ドルで1.5%増にとどまった。米国以外は為替がマイナス0.3ポイント影響し、オペレーショナル成長率は1.8%、調整後オペレーショナルでは1.9%だった。

セグメントの内訳

イノベーティブ メディスン(医薬品)部門の売上高は167億5700万ドルで7.7%増、オペレーショナルでは7.9%増だった。会社説明によれば、成長を牽引したのは免疫領域のTREMFYAと新製品群、がん領域のDARZALEX、CARVYKTI、TECVAYLI、RYBREVANT/LAZCLUZE、ERLEADA、神経精神領域のSPRAVATOとCAPLYTAである。逆に押し下げ要因となったのはSTELARA(約690ベーシスポイントのマイナス影響)、SIMPONI/SIMPONI ARIA、REMICADE、肺高血圧症領域のOPSUMIT/OPSYNVI、がん領域のIMBRUVICAだった。事業売却による成長押し下げは10ベーシスポイント。

メドテック部門は86億4200万ドルで2.5%増。心血管領域の電気生理学製品とShockwave、ビジョン領域のコンタクトレンズ、整形外科領域の外傷製品が伸びた。

四半期中の主な発表

リリースは、四半期中の主な発表として規制関連とデータ関連を列挙している。規制面では、温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)に対する初の治療薬としてIMAAVY(nipocalimab-aahu)が米FDAの承認を取得。手術支援ロボットOTTAVAが米国でFDAの市販許可を得た。RYBREVANT FASPROは進行頭頸部がんを対象に米FDAの優先審査指定を受けている。四半期後の案件として、ACUVUE OASYS MAX(再使用可能コンタクトレンズ)のCEマーキング取得も挙げられた。

データ面では、早期ラインの再発・難治性多発性骨髄腫でCARVYKTIの単回投与により50%の患者が5年間の無治療寛解を達成したとの結果、TECVAYLI+TALVEYが同領域で病勢進行または死亡リスクを89%、死亡リスクを62%低減したとの結果が示された。このほかTREMFYAの体軸性乾癬性関節炎試験、CAPLYTAの双極性躁病の第3相試験、ICOTYDE(icotrokinra)の乾癬2年データなどが並ぶ。事業面ではFirefly Bioの買収完了、Sail Biomedicinesとのin vivo CAR-T協業、卵巣がんタルク訴訟の解決案の公表、Jennifer Taubert氏の退任とTom Cavanaugh氏のイノベーティブ メディスン部門ワールドワイド会長就任(9月付)が記載されている。

Joaquin Duato会長兼CEOはリリースで、OTTAVAの提供と多発性骨髄腫の第3相良好な結果に触れ、「高成長領域への戦略的投資と合わせ、10年代の終わりまでに2桁成長を実現する道筋がより明確になった」と述べた。

通期ガイダンスの引き上げ

2026年通期見通しは、7月29日時点から各指標が引き上げられた。調整後オペレーショナル売上成長率は6.2〜6.8%(中間値6.5%)から6.4〜6.8%(同6.6%)へ。オペレーショナル売上高は1003億〜1009億ドル(中間値1006億ドル)から1005億〜1009億ドル(同1007億ドル)へ。報告ベースの売上高見積もりは1008億〜1014億ドル(中間値1011億ドル)から1010億〜1014億ドル(同1012億ドル)となった。調整後オペレーショナルEPSは10.86〜11.01ドル(中間値10.94ドル)から10.95〜11.05ドル(同11.00ドル)へ、調整後EPSは10.96〜11.11ドル(中間値11.04ドル)から11.05〜11.15ドル(同11.10ドル)へ引き上げられている。報告ベースの試算に使ったユーロ平均レートは10月・7月とも1.15ドルで変わらない。

なおJ&Jは、訴訟の帰結や買収関連費用などを合理的な確度で予測できないとして、将来見通しについてGAAPベースの指標を示していない。

意味すること

今回の決算で目を引くのは、売上と調整後利益、そしてGAAP利益の動きが大きく食い違っている点である。売上は増え、通期見通しも上積みされた一方、GAAP純利益は2億1000万ドルまで縮んだ。J&Jの調整後指標は無形資産償却費と特別項目を除いて算出されるため、投資家にとっては、どの項目が差分を生んだのかを後続のSEC提出書類で確認する作業が欠かせない。

事業面では、免疫領域の主力だったSTELARAがオペレーショナル成長率を約690ベーシスポイント押し下げてもなお、医薬品部門が7.9%成長している点が示唆的だ。TREMFYAや多発性骨髄腫関連製品、神経精神領域の製品群が、先行品の減少分を吸収しつつある構図といえる。また米国が9.1%増、米国以外が1.5%増と、地域間の伸びの差も大きい。

メドテックは2.5%増と医薬品に比べて緩やかだが、この四半期にOTTAVAが米国で市販許可を得た。CEOが「最も変革的なメドテックのイノベーションのひとつ」と位置づけた製品が市場に出る段階に入ったことになる。医薬品の新製品群とメドテックの新規プラットフォームの双方をどう積み上げるかが、CEOの言う「10年代末の2桁成長」の前提となる。