決算の数字:研究開発費の減少で損失が縮小
Chordia Therapeutics株式会社(証券コード190A、代表取締役CEO 三宅洋)は2026年10月15日付で「2026年8月期決算説明資料」を公表した。2026年8月期の事業収益は計上がなく、営業損失は1,473百万円(前期は1,789百万円の営業損失)、税引前当期純損失は1,452百万円、当期純損失は1,455百万円となった。いずれも前期から損失が縮小しており、当期純損失ベースでは330百万円の改善である。
損失縮小の主因は研究開発費の減少だ。R&D費用は1,425百万円から1,155百万円へ270百万円減少した。内訳では主力品であるrogocekib(CTX-712)が1,067百万円から795百万円へ272百万円減、CTX-439が27百万円から19百万円へ8百万円減、その他(人件費を含む)が331百万円から330百万円へ1百万円減となった一方、CTX-177は0百万円から10百万円へ10百万円増えている。
資料は、rogocekibについて拡大コホート(IEコホート)の開始とマイルストーン達成に伴い米国CRO費用が248百万円増加した一方、治験に必要な原薬・製剤を一定量確保済みであったため原薬・製剤関連コストが521百万円減少したと説明している。つまり当期の研究開発費の減少は開発の後退ではなく、製造関連費用の計上時期による面が大きい。その他一般管理費も364百万円から318百万円へ46百万円減少し、減資に伴う外形標準課税の減少、特許関連コストの減少、固定費削減施策の影響が理由として挙げられている。
財政状態では、2026年8月末の現金及び預金は2,052百万円(前期末2,548百万円)。営業活動による支出1,418百万円に対し、第9回新株予約権の行使による収入927百万円があったことで、減少幅は496百万円にとどまった。資産合計は2,114百万円、負債合計は188百万円、純資産合計は1,925百万円。会社は「今後1年間の事業活動に必要な資金を確保し、財務基盤を維持している」としている。
研究開発:rogocekibは日米129名の登録を完了、希少疾病用医薬品に指定
研究開発面では、rogocekibの米国第1/2相試験で、42症例のデータに基づき拡大コホートへの移行基準を満たす用法・用量を確認し、2026年3月よりIEコホートを開始した。症例登録総数は2026年8月末時点で日米129名となり、登録を完了している。会社概要のページでは2026年9月末時点の症例組入完了数として日本60件、米国70件が示されている。
2026年6月にはEHA 2026で米国第1/2相試験の用量漸増コホートの中間成績を発表した。また2026年8月には、日本において再発又は難治性の急性骨髄性白血病を対象とした希少疾病用医薬品に指定された。沿革のページでも、米国・日本において希少疾患指定を受理したことが記載されている。
rogocekib以外では、CTX-439に関する京都大学との共同研究の論文が2026年3月にMolecular Cancer Therapeutics、2026年6月にCell Death & Diseaseに掲載された。CTX-177については、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)における役割と治療標的としての可能性を論文発表し、2026年8月にiScienceへ掲載された。
コーポレート活動では、AMEDの大型補助金に採択された(上限15億円/国際共同治験の補助対象経費の1/2)ほか、眼科疾患領域における共同研究が挙げられている。IR活動としては、Bio International Convention 2026、Bio Asia Taiwan 2026といった海外投資家向けカンファレンスへの参加、個人投資家向けIRセミナーや第9回資産運用EXPOなどへの参加が記載された。
未達に終わった事業提携と、会社自身の総括
2026年8月期の目標に対する自己評価は3項目のうち2項目が「達成」、1項目が「未達成」である。臨床試験の進捗は、拡大コホートの開始とEHAでの第1相パート中間成績発表の2点で「達成」。株主への情報開示も、個人投資家セミナー・IR出展と企業調査レポートのHP開示で「達成」とした。
一方、新規事業提携については「未達成」とされ、重点課題と位置づけていたCTX-177の再導出は解約合意済みと記載されている。各種パイプラインの導出活動は「継続」扱いだ。
会社は総括として、研究開発及び情報開示は概ね計画どおり進捗した一方、事業提携の実現には至らなかったと記した。さらに、臨床開発の進展が企業価値評価に十分反映されていないとの認識を示し、今後は開発進展に加え、事業提携およびAMED GRiT等の助成金の活用による財務基盤の強化を通じて企業価値向上施策に取り組むとしている。
意味:登録完了後の資金計画が次の論点
今期の数字が示すのは、支出を抑えながら主力品の登録を完了させた1年だったということだ。研究開発費の減少が原薬・製剤の先行確保によるものだとすれば、損失縮小は構造的なコスト削減だけの結果ではなく、費用計上の波によるところもある。手元資金2,052百万円に対し営業活動による支出は年間1,418百万円で、会社は今後1年間の資金を確保しているとしている。
その前提で、自己評価が「未達成」とした事業提携の行方は重みを増す。資本市場からの調達(第9回新株予約権の行使による927百万円)とAMEDの補助金(上限15億円、補助対象経費の1/2)という二つの手段に加え、提携が実現するかどうかが、次のフェーズの開発資金の性格を左右する。
開発面では、日本での希少疾病用医薬品指定と、日米129名の症例登録完了という二つの事実が並んだ。会社自身が「臨床開発の進展が企業価値評価に十分反映されていない」と書いた点は、2027年8月期にどのような情報開示と提携協議の結果を示せるかという課題を、自ら明示したものと読める。