何が発表されたか
GSK plc(LSE/NYSE: GSK)は2026年10月16日、ロンドン発のリリースで、スペイン・マドリードで10月23日から27日に開催される欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2026年大会において、拡大中の固形がんポートフォリオから20件を超える抄録を発表すると明らかにした。対象は肺がん、婦人科がん、消化器がんの各領域で、risvutatug rezetecan(Ris-Rez)、mocertatug rezetecan(Mo-Rez)、Jemperli(dostarlimab)に関する新たな治験データが含まれる。
主な発表は次の4つである。
第一に、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)におけるRis-Rez。グローバル第I/II相試験「EMBOLD PanTumor-101」の結果が示され、第III相で選択された用量において、良好な抗腫瘍活性と管理可能な忍容性が報告される。抄録番号は#1071P(10月23日15:15-16:00 CET、発表者S. Goel)と#3841P(10月26日12:00-12:45 CET、発表者H. R. Kim)。リリースによれば、中国で既に報告された良好な第III相データと合わせ、再発ES-SCLCにおける治療選択肢の限られた状況と予後不良に対応しうる可能性を支持するとしている。
第二に、骨肉腫におけるRis-Rez。GSKのライセンサーであるHansoh Pharmaが、第III相「ARTEMIS-011」試験の詳細なlate-breakingデータを発表する(抄録#LBA9、10月26日16:30-18:15 CET、Presidential Symposium、発表者L. Xie)。これは本年前半に公表された良好なトップラインの結果に続くものと位置づけられている。
第三に、プラチナ抵抗性卵巣がん(PROC)におけるMo-Rez。第I相「BEHOLD-1」試験の13カ月追跡データがlate-breakingとして示され、臨床的に意味のある持続的な奏効と良好な無増悪生存のデータ、ならびに忍容性データが報告される(抄録#LBA41、10月24日8:30-10:00 CET、Rapid Oral Session、発表者V. Salutari)。リリースは、B7-H4を標的とする差別化された治療としての可能性を支持すると説明している。
第四に、MSI-H/dMMRの局所進行直腸がん(LARC)におけるJemperli(dostarlimab)。承認申請を見据えた第II相「AZUR-1」試験の結果が、Proffered Paper Sessionで発表される(抄録#LBA87、10月25日10:15-11:45 CET、発表者A. Cercek)。解析には、持続的な臨床的完全奏効に関する臨床的に意味のあるデータが含まれるとしている。
演題の広がり
今回のラインアップは、主要3製品にとどまらない。Ris-Rezでは、進行固形がん患者における間質性肺疾患(ILD)症例のプール解析(#1068P)、再発小細胞肺がんを対象に標準治療と比較するグローバル第III相「EMBOLD-SCLC-301」の試験デザイン(#3861TiP)、欧州のES-SCLC患者の実臨床治療パターンを調べた「RESONANCE」研究(#3836P)が並ぶ。
Mo-Rezでは、BEHOLD-1のバイオマーカー探索解析(#1248RO)に加え、PROCを対象とする第III相「BEHOLD-Ovarian01」(#1341TiP)、プラチナ製剤および免疫療法後の進行・再発子宮体がんを対象とする第III相「BEHOLD-Endometrial01」(#1340TiP)という2本の第III相試験デザインが示される。
Jemperliでは、フランスの早期アクセスプログラムに基づくdMMR/MSI-H子宮体がんの実臨床データ(#1285P)、米国のステージIII原発進行子宮体がん(#1287P)およびMMRp/MSS症例(#1286P)の実臨床アウトカムなど、リアルワールドデータが複数含まれる。
このほか、進行消化管間質腫瘍(GIST)を対象とするVelzatinib(IDRX-42)の第1/1b相「StrateGIST 1」におけるKIT循環腫瘍DNAの分子奏効(#3718RO)、Zejula(niraparib)の第III相FIRST/ENGOT-OV44におけるベバシズマブの寄与評価(#1272P)、アンドロゲン受容体分解薬GSK5471713の転移性去勢抵抗性前立腺がんでのfirst-time-in-human第1/2相(#2302TiP)、GSK5533524の第1相(#1139eTiP)も発表される。
アライアンス試験としては、局所dMMR/MSI-H胃食道腺がんでのdostarlimabのwatch-and-wait戦略を検証する第II相「DEWI」の初回中間解析(#2877RO)、局所進行直腸がんでの術前dostarlimabと短期放射線療法を評価する「PRODIGE 90」(#3548TiP)、局所進行頭頸部扁平上皮がんでのniraparib+dostarlimab+放射線療法(#LBA46)などが並ぶ。
業界にとっての意味
GSKのオンコロジーR&Dグローバルヘッドであるシニアバイスプレジデント、Hesham Abdullah氏は「ESMOで発表するデータは、最も治療が難しいがん種のいくつかにおける我々の進展を反映している。肺がんや婦人科がんから消化器腫瘍まで、深く持続的な奏効をもたらし、耐性を克服し、治療負担を軽減するよう設計された差別化医薬品のポートフォリオを構築している」と述べている。
今回のリストを読むと、GSKの固形がん領域が「単発の有望データ」から「第III相の設計を提示する段階」へ移りつつあることが分かる。Ris-RezではEMBOLD-SCLC-301、Mo-RezではBEHOLD-Ovarian01とBEHOLD-Endometrial01と、第I/II相の結果発表と同じ学会で後期開発計画(TiP抄録)が並走して示されている。初期データと検証試験の設計が同時に公開される構成は、開発の連続性を示す材料になる。
また、Jemperliについては、AZUR-1という承認申請を見据えた試験結果と、フランス・米国の実臨床データが同時に提示される。開発段階のエビデンスと市販後の使用実態が並ぶ点は、免疫チェックポイント阻害薬の価値評価が臨床試験成績だけで完結しなくなっている現状を映している。
疾患背景としてリリースは、肺がんが世界で最も多く診断されるがんであり、がん死亡の最大要因で、年間およそ250万人の新規症例と188万人の死亡があるとする。非小細胞肺がんが全肺がんの約85%を占め、小細胞肺がんはより少ないが典型的により侵攻性が高い。子宮体がんは世界で160万人が罹患し年間41万7,000人が新規に診断され、15〜20%が進行期で見つかる。卵巣がんは84万3,000人が罹患し年間24万人が新規診断され、70%が進行期で発見される。再発は進行例で多く、子宮体がんで最大67%、卵巣がんで70%に達する。直腸がんのうちdMMRまたはMSI-Hは約5〜10%とされる。治療選択肢が限られた領域が複数残っていることが、今回の演題群の前提にある。