1〜9月はグループ464億9,300万スイスフラン

ロシュは2026年10月22日、バーゼルで上場規則第53条に基づくアドホック開示として、2026年1〜9月の売上を発表した。グループ売上は46,493百万スイスフラン(465億スイスフラン)で、CER(為替一定ベース)で+6%、スイスフラン建てで+1%、米ドル建てで+7%。第3四半期単独ではCERで+7%、スイスフラン建てで+8%、米ドル建てで+7%となった。会社は、為替が安定したことが第3四半期のスイスフラン建て成長率に表れたと説明している。1〜9月については、スイスフランが米ドルをはじめ多くの通貨に対して上昇したことが、スイスフラン建ての報告値に大きく影響したが、この為替影響は第3四半期に反転した。

部門別では、医薬品部門が36,212百万スイスフラン(362億スイスフラン)でCER+7%、スイスフラン建て+2%、米ドル建て+8%。診断薬部門は10,281百万スイスフラン(103億スイスフラン)でCER+4%、スイスフラン建てでは横ばい、米ドル建て+6%だった。診断薬部門は、中国の医療価格改革の影響を、コアラボと病理ソリューションの需要が上回ったとしている。

成長の牽引役は上位5製品、すなわちXolair(慢性蕁麻疹、食物アレルギー)、Hemlibra(血友病A)、Ocrevus(多発性硬化症)、Phesgo(乳がん)、Vabysmo(重篤な眼疾患)で、合計売上は168億スイスフラン、CERで+12%、スイスフラン建てで+6%。一方、特許が切れた製品群(Avastin、Herceptin、MabThera/Rituxan、Lucentis、Actemra/RoActemra)は合計でCERベース4億スイスフラン、スイスフラン建てで6億スイスフラン減少した。

日本は+25%、ERP導入の時期要因も

地域別の医薬品売上では、米国が18,712百万スイスフランでCER+5%(スイスフラン建ては横ばい)、欧州が6,819百万スイスフランでCER+2%(同横ばい)、インターナショナル地域が8,329百万スイスフランでCER+10%(同+7%)。

日本は2,352百万スイスフランで、前年同期の2,139百万スイスフランからCERで+25%、スイスフラン建てで+10%と、地域別で最も高い伸びとなった。会社は要因として、第三者への製品供給と、Lunsumio(血液がん)、Hemlibra、Polivy、Elevidys(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、Vabysmoの継続的な成長を挙げている。加えて、新しいERP(基幹業務システム)導入に関連する時期的な要因がプラスに働いたとしている。日本の構成比はグループ売上の5.1%で、前年同期の4.7%から上昇した。

中国はCERベース・スイスフラン建てともに横ばいで、Phesgo、Vabysmo、Alecensa、Polivyの成長を、PhesgoへのコンバージョンによるPerjetaの減少と、2025年のインフルエンザ流行が穏やかだったことによるXofluzaの減少が相殺した。診断薬部門ではアジア太平洋が中国の医療価格改革の影響でCER-4%(スイスフラン建て-8%)、北米はCER+9%、ラテンアメリカはCER+12%だった。

規制面の積み上がりと「2030年までに最大20の新薬」

四半期中の規制面の動きとして、米国ではTecentriqがステージIIIのDNAミスマッチ修復欠損(dMMR)大腸がんの術後補助療法で承認された(10月9日発表、第III相ATOMIC試験に基づき、化学療法単独比で再発・死亡リスクを50%低減、米国で12番目の適応)。Enspryngは甲状腺眼症で承認され(10月16日発表)、在宅皮下投与の選択肢となる。Gazyva/Gazyvaroは2歳以上の小児発症特発性ネフローゼ症候群の再発リスク低減で承認された。

審査中の案件では、fenebrutinibが再発型および一次進行型多発性硬化症の両方で優先審査の対象となった。第III相FENhance 1・2でteriflunomide比の再発を51%、58%低減し、FENtrepidでは10年以上ぶりにPPMSで障害進行を遅らせた試験薬となったとされる。EnspryngのMOGAD、vamikibartのぶどう膜炎黄斑浮腫も米国で申請受理。欧州ではSusvimoが滲出型加齢黄斑変性で、Ocrevusが小児再発型多発性硬化症で承認された。

診断薬ではElecsys pTau217血液検査が米国でクリアランスを取得。生産・研究開発面では、米国のHillsbroro注射剤施設とボストンのイノベーションセンター、バーゼルの低分子施設の拡張が挙げられている。

トーマス・シネッカーCEOは、今年に入って5つの新規候補を開発最終段階に進め、2030年までに最大20の新薬を患者に届けることを目指すと述べた。giredestrantも早期・進行乳がんの両方でFDA優先審査中で、承認を前提に年内の発売準備が整っているとした。

意味:特許切れ品の目減りを、上位5製品が上回る構図

今回の数字が示すのは、特許切れ製品群の合計減少(CERで4億スイスフラン)を、上位5製品の増加(CERで+12%、合計168億スイスフラン)が大きく上回る構図である。ポートフォリオの入れ替えが売上段階で機能していることが、通期見通し据え置きの根拠になっている。

日本市場については、+25%という伸びの内訳に第三者への製品供給とERP導入の時期要因が含まれる点を、発表資料自身が明示している。実需の伸びと一時的要因が混在しているため、次四半期以降の推移で切り分けが必要になる。

2026年通期の見通しは据え置かれ、グループ売上はCERでミッドシングルディジットの増加、コアEPSはCERでハイシングルディジットの伸びを目標とし、スイスフラン建て配当のさらなる増配を見込むとしている。