決算の数字
中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:奥田修)は本日、2026年12月期第3四半期連結決算を発表した。
2026年1-9月のCore実績は、売上収益が10,681億円(前年同期9,116億円、前年同期比17.2%増)、営業利益が5,361億円(同4,505億円、19.0%増)、四半期利益が3,847億円(同3,200億円、20.2%増)で、増収増益となった。同社は通期予想に対し過達を見込むとしている。
内訳は、国内製商品売上高が4,063億円(前年同期3,437億円、18.2%増)、海外製商品売上高が5,005億円(同4,509億円、11.0%増)、その他の売上収益が1,613億円(同1,171億円、37.7%増)。伸び率ではその他の売上収益が最も大きい。
製商品売上高については、NEMLUVIOとアレセンサの輸出増加、国内の主力品および新製品の増加が要因として挙げられている。あわせて同社は、次世代基幹業務基盤(ERP)の稼働に向けた移行対応として国内の出荷時期を前倒ししたことにより、国内製商品売上高が増加したと説明している。その他の売上収益は、ヘムライブラとNEMLUVIOのロイヤルティ収入に加え、一時金収入により増加した。
研究開発の進捗
同社は研究開発活動について、自社創製品をはじめとする開発早期・後期で着実に進捗したとしている。資料に記載された個別の動きは次のとおり。
独自の抗体エンジニアリング技術を用いたエンスプリングについて、甲状腺眼症(TED)に対し、米国食品医薬品局(FDA)が承認した。
血友病A治療薬ヘムライブラについては、治療負担のさらなる軽減を目指したオートインジェクター製剤を、国内外で2027年に上市することを目指す。ヘムライブラは、世界的権威のあるラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞を受賞した同社研究者が創製を主導した製品である。
パイプラインの体制面では、emugrobartについてロシュからのライセンス返還を予定する。また脊髄性筋萎縮症(SMA)に対しては、第三者への導出も含め、自社開発再開に向けた準備を開始した。
臨床試験では、ルンスミオの再発又は難治性濾胞性リンパ腫、セーファキセルセンのIgA腎症を対象とした第III相試験において、いずれも中間解析時点で主要評価項目を達成した。自社創製品のDONQ52については、セリアック病を対象とした第Ia/b相試験および第Ic相試験におけるBiological PoC結果を、11月のICDS 2026(International Celiac Disease Symposium)で発表する予定としている。
この決算をどう読むか
今回の数字でまず目を引くのは、売上収益の伸び(17.2%)よりも営業利益(19.0%)、さらに四半期利益(20.2%)の伸びが大きい点である。増収が利益により強く効いている構図で、その他の売上収益が37.7%増と突出して伸びていることが、この利益の伸びと無縁ではない。ロイヤルティ収入と一時金収入は、製商品の販売とは異なり原価構造を伴いにくい収益であり、構成比の変化が利益率に反映されやすい。その他の売上収益は1,613億円で、全社売上収益10,681億円の一定の部分を占めるまでになっている。
もう一つ注意して読むべきなのが、国内製商品売上高18.2%増という数字の内訳である。同社自身が、ERP稼働に向けた移行対応として国内の出荷時期を前倒ししたことが増加要因だと明記している。つまりこの伸びには、需要そのものの拡大とは別の、期ずれに相当する要素が含まれている。通期予想に対する過達見込みを評価する際も、この前倒し分をどう扱うかは論点になる。会社が要因を自ら開示している以上、読み手の側もそこを分けて見る必要がある。
海外は11.0%増と国内より伸び率は低いが、NEMLUVIOとアレセンサの輸出増加が挙げられており、ロイヤルティ収入の源泉ともなっているNEMLUVIOが、製商品とその他収益の両面で業績に寄与している形だ。
パイプライン面では、エンスプリングのTEDに対するFDA承認という適応拡大、第III相試験2本での主要評価項目達成という前進の一方で、emugrobartのロシュからのライセンス返還、SMAでの自社開発再開準備という、開発体制の組み替えにあたる動きも同時に開示された。自社創製品を軸に据えつつ、品目ごとに担い手を見直す判断が並行して進んでいることが読み取れる。
決算の詳細は、同社ウェブサイトの決算短信・補足資料および決算説明会資料で公開されている。説明会資料には業績動向に加え研究開発パイプラインの進捗が含まれ、動画およびスクリプトは後日掲載される。