何が起きたか
イーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE: LLY)は2026年10月28日、米インディアナポリス発で、治験薬レタトルチドと注射剤オゼンピック2mgを直接比較した第3相試験「TRANSCEND-T2D-2」のトップライン結果を発表した。80週時点で主要評価項目とすべての主要な副次評価項目を達成し、A1C低下幅と体重減少のいずれもオゼンピックを上回った。
試験の内容と数字
TRANSCEND-T2D-2(NCT06260722)は、メトホルミン単剤またはSGLT2阻害薬との併用で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病の成人1,298人を対象とした、ランダム化・非盲検の第3相試験である。ベースラインのA1Cが7.0%〜10.5%の参加者を、レタトルチド9mg、レタトルチド12mg、オゼンピック2mgに2対2対1で割り付けた。レタトルチドは2mgから開始し、4週ごとに増量して9mgまたは12mgの目標用量に到達させる設計。主要目的は、80週時点のA1C低下についてレタトルチド12mgがオゼンピック2mgに対して非劣性であることを示すことだった。
結果は、平均ベースラインA1C 8.3%からの変化が、レタトルチド9mgで-2.2%、12mgで-2.2%、オゼンピック2mgで-1.8%。体重は、平均ベースライン102.4kg(225.8ポンド、BMI 36.8kg/m²)から、9mgで-19.5%(-20.1kg、-44.3ポンド)、12mgで-20.9%(-21.5kg、-47.4ポンド)、オゼンピック2mgで-9.4%(-9.5kg、-20.9ポンド)だった。いずれもp<0.001で、優越性についてfamily-wise type 1 errorが制御されている(9mgのA1Cにおける優越性と収縮期血圧は事前規定の副次評価項目で、名目上の有意差)。なお、9mgのA1C非劣性は主要な副次評価項目として誤差制御下で達成された。これらの数値はefficacy estimand、すなわち全参加者が80週間治験薬を継続し、追加の血糖降下薬を開始しなかった場合の有効性を表す。
レタトルチドは、non-HDLコレステロール、トリグリセリド、収縮期血圧といった一部の心血管リスク因子でもオゼンピックを上回る改善を示した。
有害事象(9mg、12mg対オゼンピック)は、下痢28.3%・32.7%対26.4%、悪心21.2%・23.8%対21.3%、便秘14.2%・13.1%対19.8%、嘔吐10.2%・15.0%対13.2%、消化不良10.4%・8.5%対11.6%。異常感覚は4.8%・6.5%対2.7%、尿路感染は5.8%・4.2%対5.8%だった。大半は軽度から中等度で、治療中に消失するのが一般的だったとしている。有害事象による投与中止率は4.8%(9mg)、7.9%(12mg)、2.7%(オゼンピック)。試験には約650人が追加で24週間レタトルチド投与を継続する延長期間も含まれる。
背景
レタトルチドは週1回投与の治験中のトリプルホルモン受容体作動薬で、GIP、GLP-1、グルカゴンの各受容体を1分子で活性化する。肥満・過体重、2型糖尿病のほか、変形性膝関節症の疼痛、中等症〜重症の閉塞性睡眠時無呼吸、慢性腰痛、心血管アウトカム、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患を対象に複数の第3相試験が進行中である。FDAをはじめ世界のいずれの規制当局からも承認されておらず、リリーは「消費者にレタトルチドを販売すると称する者は違法」と明記している。
TRANSCEND-T2Dプログラムは2024年に開始され、3本のグローバル登録試験で2,050人超を組み入れている。今回はレタトルチドが強力な有効性を示した6本目の第3相試験であり、他のインクレチン製剤との初めての第3相直接比較試験でもある。リリーは別途、肥満の成人(2型糖尿病の有無を問わない)を対象にレタトルチドとチルゼパチドを直接比較する第3相試験TRIUMPH-5も実施中。TRIUMPH-2では、2型糖尿病と肥満を併せ持つ人の最高用量群で平均49.6ポンド(20.8%)の体重減少が報告されている。
業界にとっての意味
同社カルディオメタボリックヘルス担当エグゼクティブ・バイスプレジデント兼プレジデントのKenneth Custer博士は、直接比較試験について「患者と医師に対し、今日利用でき償還もされている治療と新薬候補がどう比較されるかを示すもの」と述べ、承認されれば2型糖尿病、肥満、関連する心血管代謝疾患の治療パラダイムを変え得るとの見方を示した。
比較対象に選ばれたのは、注射剤オゼンピックの承認済み最高用量である2mgだ。既承認薬のプラセボ対照データではなく、最高用量との直接比較で体重減少が2倍超という結果が出たことは、処方現場や支払者が薬剤を選ぶ際の判断材料の質を変える。一方で、有害事象による投与中止率は12mgで7.9%と比較群の2.7%より高く、異常感覚の発現率にも差があった。効果の大きさと忍容性のバランスをどう評価するかは、詳細データの公表後に議論の焦点となる。
TRANSCEND-T2D-2の詳細結果は、今後の学会で発表され、査読付き学術誌に掲載される予定。