何が起きたか

The Galien Foundation(事務局:New York, USA、会長:Bruno Cohen)は現地時間2026年10月29日(木)、ニューヨークの米国自然史博物館で第20回「プリ・ガリアン・USA」を開催した。今年は2年に一度、世界各国の受賞製品のなかからさらに最優秀を選ぶ「プリ・ガリアン・インターナショナル」の開催年にもあたり、同日・同会場で両賞が発表された。

このうち「プリ・ガリアン・インターナショナル 2026」の最優秀バイオテクノロジー賞[Best Biotechnology Product]に、第一三共/アストラゼネカの抗がん剤「エンハーツ」が選ばれた。同賞はRegeneron and Sanofiの「Dupixent®」も併せて受賞している。

同じくインターナショナルでは、最優秀デジタルヘルスソリューション賞にEvaxionの「AI-Immunology™ platform」、最優秀メディカルテクノロジー賞にEdwards Lifesciencesの「Edwards EVOQUE Transcatheter Tricuspid Valve Replacement System」、最優秀医薬品賞にMSDの「KEYTRUDA®」とVertex Pharmaceuticalsの「CASGEVY®(exagamglogene autotemcel)」、最優秀オーファン・希少疾患製品賞にImmunocoreの「KIMMTRAK®(tebentafusp-tebn)」、最優秀スタートアップ賞にDren Bioが選ばれた。

同日発表の「プリ・ガリアン・USA 2026」では、最優秀バイオテクノロジー賞にDenali Therapeuticsの「AVLAYAH™(tividenofusp alfa-eknm)」、最優秀医薬品賞にNovartisの「PLUVICTO®」、最優秀オーファン・希少疾患製品賞にSyndax Pharmaceuticalsの「REVUFORJ®」、最優秀デジタルヘルスソリューション賞にAEYE Healthの「AEYE-DS」、最優秀メディカルテクノロジー賞にGuardant Healthの「Shield™」、インキュベーター/アクセラレーター/エクイティ賞にPureTech Health、最優秀スタートアップ賞にScience CorporationとStrand Therapeuticsが選出されている。

受賞コメントと、これまでの経緯

受賞者コメント(抜粋)によれば、この部門での受賞は今回が2度目で、2024年には米国の賞(プリ・ガリアン・USA 2024)を受賞している。過去の受賞一覧でも、エンハーツは最優秀バイオテクノロジー賞を2024年・インターナショナル[イタリア開催時]、2024年・米国で受けたと記載されている。

コメントでは、エンハーツが第一三共が2010年に研究を開始した独自のDXd ADC技術を基盤とし、バイオ医薬品として史上最速クラスのスピードで開発されたこと、7年間で9つの適応症において治療のあり方を変えるデータを示したこと、現在では世界で25万人を超える患者に使用されていることが挙げられている。

プリ・ガリアンは1970年にフランスで創設された医薬品・医療技術分野の国際アワードで、「医療のノーベル賞」とも称される。最終審査を医師・研究者が行い、個人ではなく製品・研究チームを表彰する点が特徴とされる。受賞候補の条件は過去5年以内に国から承認を受けていることと、人々の健康向上に極めて大きな可能性を示していることで、選考では売上データを考慮せず、科学的根拠と健康へのインパクトのみを評価する。歴代審査員にはノーベル生理学・医学賞受賞者13名が名を連ね、バラク・オバマ元米国大統領、ビル・クリントン元米国大統領、ジョージ・ブッシュ元米国大統領、テドロス・アダノムWHO事務局長らから公式メッセージが寄せられてきたという。現在は米国・英国・フランス・インド・韓国など世界17か国とアフリカ地域で展開され、日本・シンガポール・オーストラリアへの拡大が進行中とされる。

日本発の製品が海外で受賞した例としては、ほかにオプジーボ(ブリストル マイヤーズ スクイブ/小野薬品工業)、ヘムライブラ(中外製薬、ロシュ)、エンタイビオ(武田薬品工業)、ポテリジオ(協和キリン)などが挙げられている。

プリ・ガリアン・ジャパン 2027の概要

「プリ・ガリアン・ジャパン 2027」は2027年2月25日(木)、東京・ホテルニューオータニ(東京都千代田区紀尾井町4-1)で日本初開催となる。主催はThe Galien Foundation。フォーラムは13時前後開始を予定、授賞式典は18時前後開始を予定で、いずれも時間は調整中。内容はフォーラム、授賞式典、ディナーセレモニー。受賞製品・企業は5製品・2企業を予定し、授賞式典当日に発表される。

賞カテゴリーは医薬品、バイオテクノロジー、オーファン・希少疾患、メディカルテクノロジー、デジタルヘルス、スタートアップ(A:バイオテック、B:メドテック/デジタルヘルス)の6つ。スタートアップを除く各カテゴリーは、2020年1月1日〜2026年12月31日に日本国内で製造販売承認を取得した製品が対象となる(ジャパンは過去7年以内に国から承認された製品が対象)。スタートアップは上市されている必要はなく、研究開発・臨床試験段階の製品も対象となる。加えて特別賞として「人類貢献賞」「日本若手医科学者奨励賞」が委員会の裁量により授与されることがある。審査基準は①科学的・臨床的な革新性②生物医学科学への知見の貢献③人々の健康状態の向上へのインパクトの3点で、市場規模・企業規模・開発費用は評価対象外とされる。

審査委員長は門脇孝氏(虎の門病院 院長、東京大学 名誉教授)。審査員は満屋裕明氏、岡野栄之氏、審良静男氏、青木吉嗣氏、土井俊彦氏、大隅典子氏、藤堂具紀氏。メディカルテクノロジー/デジタルヘルス/スタートアップのカテゴリー審査員は近日発表予定としている。スケジュールは審査書類提出締切が2026年11月6日(金)、審査期間が2026年11月〜2027年2月、ノミネート候補の発表が2027年1月〜、受賞発表が2027年2月25日の授賞式典。

ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥教授、本庶佑教授からも祝福のメッセージが寄せられている。

業界にとっての意味

プリ・ガリアンが売上データを評価に用いず、科学的根拠と健康へのインパクトのみで判断すると明示している点は、企業規模や市場性とは別の軸で創薬の成果が可視化されることを意味する。エンハーツのように2010年の研究開始から独自技術を積み上げてきた製品が国際版で評価されたことは、日本発の基盤技術が国際的な審査の俎上で通用することを示した形だ。

日本開催の意義について資料は、日本ががん治療・再生医療・AIを活用した創薬・デジタルヘルスで注目を集める一方、世界で最も早く高齢化が進んだ国として予防医療の停滞や新薬承認の遅延といった課題を先行して抱える「課題先進国」である点を挙げ、その知見と挑戦を世界に発信する拠点を目指すとしている。日本国内の承認を要件に据えたカテゴリー設計は、国内で承認された製品を国際的な評価の枠組みに乗せる経路が新たに一つ増えることを意味する。審査書類の提出締切は2026年11月6日で、対象企業にとっては短い準備期間となる。