事実:欧州はMAA受理、日本はNDAが審査入り
HUTCHMED(和黃醫藥(中國)有限公司、HKEX:13、Nasdaq/AIM:HCM)は、香港取引所への自主開示で、ORPATHYS®(サボリチニブ)とTAGRISSO®(オシメルチニブ)の併用療法に関する規制当局への申請が、欧州と日本で審査受理されたと発表した。
欧州では、アストラゼネカが提出した販売承認申請(MAA)を欧州医薬品庁(EMA)がバリデーションのうえ審査受理した。対象は、腫瘍がMET過剰発現またはMET増幅を有し、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)治療中または治療後に病勢進行した、局所進行または転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者である。
日本では、アストラゼネカが厚生労働省に新薬承認申請(NDA)を提出し、同じく審査受理された。対象は、MET過剰発現またはMET増幅を有し、EGFR-TKI治療後に病勢進行した切除不能な進行・再発NSCLC患者とされている。
今回の日欧での申請は、同じ併用療法について2026年9月に米国食品医薬品局(FDA)へNDAを提出したことに続くものだと、発表資料は位置づけている。ORPATHYS®はアストラゼネカとHUTCHMEDが共同開発し、アストラゼネカが販売を担う。
背景:SAFFRON第III相の数字
申請の根拠となったのは、グローバル第III相試験「SAFFRON」の良好な結果である。同試験の成績は欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2026のプレジデンシャル・シンポジウムで発表され、同時にThe New England Journal of Medicineに掲載された。高レベル結果の公表は2026年8月だった。
SAFFRONは、TAGRISSO®による1次または2次治療後に病勢進行したEGFR変異陽性かつMET過剰発現・増幅を有する局所進行/転移性NSCLC患者338例を対象に、ORPATHYS®(300mg1日2回)をTAGRISSO®(80mg1日1回)に上乗せする群と、プラチナ製剤ベースの2剤併用化学療法群を比較した無作為化非盲検多施設共同試験。北米、欧州、南米、アジアの29カ国・230施設で登録された。主要評価項目はPFS、主な副次評価項目はOSである。患者選択には、第II相SAVANNAH試験で特定された高METのカットオフ値(免疫組織化学染色=IHCと蛍光in situハイブリダイゼーション=FISH)が前向きに用いられた。
結果は、併用群が化学療法群に対して病勢進行または死亡のリスクを45%低下させた(PFSハザード比0.55、95%信頼区間0.42-0.72、p<0.001)。盲検下独立中央判定によるPFS中央値は併用群7.6カ月、対照群5.4カ月。OSはリスクを32%低下させ(HR 0.68、95%CI 0.50-0.91、p=0.010)、中央値は17.8カ月対12.9カ月で4.9カ月延長した。安全性プロファイルは各薬剤の既知のものと一致し、新たな安全性の懸念は認められなかった。
意味:3次元の耐性に対する選択肢
第3世代EGFR-TKIはEGFR変異陽性NSCLCの治療成績を大きく改善したが、MET過剰発現・増幅はその治療中に生じる最も一般的な耐性機序の一つで、MET主導の進行は予後不良と関連する。資料によれば、第3世代EGFR-TKI投与後に進行した患者のおよそ3人に1人で、高レベルのMET過剰発現または増幅(IHC3+>90%かつFISH10+)が生じる。肺がんはがん死亡全体の約23%を占め、NSCLCは肺がん患者の80-85%、うち約75%が進行期で診断される。EGFR変異陽性NSCLCは米欧で10-15%、アジアでは30-40%とされており、日本を含むアジアでこの耐性集団の重みは相対的に大きい。
ORPATHYS®はすでに中国でMETエクソン14スキッピング変異を有するNSCLCに承認され、MET増幅の胃・食道胃接合部腺がんに条件付き承認を取得している。TAGRISSO®との併用は、第III相SACHI試験に基づき中国で、第II相SAVANNAH試験に基づきスイスで暫定的承認を得ていた。今回の日欧での受理は、中国・スイスに限られていたこの併用の規制上の広がりが、米国申請に続いて主要市場の審査プロセスに乗ったことを意味する。審査の結果は今後の判断に委ねられるが、EGFR-TKI後のMET主導耐性という、治療選択肢が限られてきた領域に、第III相で生存延長を示した併用レジメンが申請段階まで到達した点は、日本の肺がん診療にとって実務的な論点となる。