キッセイ薬品工業は5月15日、ANCA関連血管炎治療薬タブネオスカプセル10mgについて、医療従事者に新規患者への投与を控えるよう求める情報提供活動を開始した。
投与後の死亡例が国内で20例、胆管消失症候群(VBDS)の重篤例が22例(うち死亡13例)報告されたため。

タブネオスは補体C5a受容体に選択的に拮抗する世界初の経口低分子医薬品であり、気象疾患であるANCA関連血管炎を対象としている。
従来のANCA関連血管炎治療は、大量のステロイド薬と免疫抑制剤を基本とし、ステロイドの長期使用による副作用が大きな課題であった。タブネオスは、ステロイド使用量を減らしつつ寛解導入・維持を可能にするステロイドスペアリング薬として期待されてLaunchした。
開発元は米ケモセントリクス(現アムジェン子会社)であり、キッセイ薬品は2017年6月に日本での独占的開発・販売権を取得し、ケモセントリクス主導の国際臨床第3相試験(ADVOCATE試験)に参画した。国内では2021年9月に製造販売承認を取得、2022年6月に発売している。
2026年3月期(2025年度)の同剤売上は115億2,400万円であり前期比35.6%増を成し遂げて主力品の一つになっている。同社の医薬品事業売上752億円(2024年度)の約15%を占めている。

そして2026年5月15日、キッセイ薬品はPMDA・厚生労働省と協議の上、医療従事者向け情報提供を開始している。
公表された数字としては、
·       国内推定使用患者数は約8,503人(2026年4月27日時点)
·       死亡報告は20例(因果関係不明含む)
·       胆管消失症候群(VBDS)重篤例は22例(うち死亡13例)。VBDS発現時期は投与開始から84日以内、特に29〜56日に集中している。

VBDSは肝臓内の小型胆管が消失する重篤な肝障害で、薬剤性肝障害の中でも特に予後不良な病態として知られ、発症すれば肝不全・死亡に至るリスクが高い。
これを踏まえ、キッセイ薬品は当面の間は新規患者への本剤の投与は控えること継続投与中の患者には「本剤による肝機能障害のリスク」および「代替治療」を十分説明し、継続投与の是非を慎重に判断することを医療機関に要請している。
5月18日には上野厚労相が医療機関への新規投与中止を要請している。現時点で国内承認は継続しており、自主的な新規投与中止と継続投与の慎重判断という状態になっている。
一方、海外では別の問題が取り沙汰されている。FDAの医薬品評価研究センター(CDER)は2026年4月、米国市場におけるタブネオスの承認撤回を提案した。

撤回提案の理由は2点とされる。「承認申請書類に重要な事実に反した記載が含まれていた」、「新たに得られた情報では有効性が示されていない」である。つまり、治験データ虚偽疑いである。

報道によればFDAは4月の公表資料で薬が有効であるかのように見せるため、重要な臨床試験の結果を操作していたと、開発元のケモセントリクスによる不正を指摘した。
それに対し、開発元の親会社である米アムジェンは5月5日、「FDAの評価には同意しない。有効性は実証されており、重要な治療薬だ」と反論を公表している。

本件がキッセイ薬品の業績へ与えるインパクトは大きい。前述の通り本薬剤は同社の2026年3月期決算で115億円を記録しており、医薬品事業全体の約15%を占める主力品である。
これを反映して5月18日のキッセイ薬品株はストップ安水準まで切り下げた。

キッセイ薬品はタブネオス問題の業績影響について「現在精査中」としているが、今後の決算や中期経営計画に与える影響は甚大であると思われる。