エーザイが4月30日、アルツハイマー病のための薬剤であるレケンビ(一般名:レカネマブ)の2025年度世界売上収益が880億円に達したと発表した。米国446億円、日本244億円、中国124億円という内訳で、前年度443億円、その前は43億円だったので、急速に伸びている。
エーザイの内藤晴夫CEOは2024年度決算説明会で「レケンビはブロックバスターへの道を着実に歩んでいる」と語り、25年度の目標を765億円としていた。それを100億円以上上回っての着地となった。
アルツハイマー病の研究は、1990年代以降アミロイド仮説(脳内に異常蓄積するアミロイドβというタンパク質が認知機能低下の根本原因であり、これを除去すれば病態の進行そのものを止められるはず)が主流になっている。
しかしこの仮説に基づく抗体医薬の開発は、25年以上にわたって失敗を繰り返しており、数多くの薬剤が開発中止となった。
一方、2021年6月にエーザイ・バイオジェン両社が米FDAから迅速承認を取得した抗体薬「アデュヘルム(一般名:アデュカヌマブ)」は期待値が非常に高かったが、有効性をめぐって賛否両論であったり、メディケアでの保険償還ができなかったりと、商業的には失敗に終わってしまった。
今回のレケンビはそんな中で、世界で初めて認知機能低下抑制効果が統計的に頑健に証明されたとしている。Clarity AD試験では、投与18カ月時点でCDR-SBの悪化をプラセボ対比27%抑制(p=0.00005)。副次評価項目もすべて統計的に有意で、ADAS-Cog14で26%、ADCS MCI-ADLで37%の認知・日常生活機能低下抑制を示した。
これまでアルツハイマー病領域で承認されていた薬剤(アリセプトなど)は対症療法薬であり、神経伝達物質の量を補正したり受容体に作用したりすることで認知機能の症状を一時的に和らげる効果はあるが、病態の進行そのものは止められない。
これに対してレケンビは「疾患修飾薬(DMT:Disease Modifying Therapy)」として承認された世界初のアルツハイマー病治療薬であり、脳内のアミロイドβ凝集体に直接結合し、これを除去することで病気の進行そのものを遅らせる。
ただし対象患者は限定される。承認された適応は「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)または軽度認知症」に限られ、それ以前の段階で診断されること、アミロイドPETや髄液検査でアミロイド病理が確認されることが条件となる。すでに進行した認知症患者は対象外となっている。
3. 売上実績の評価
前述の通り880億円は2024年度の443億円から倍増しており、米国・日本・中国の3市場すべてで拡大している。特に最大市場である米国での売上は2023年度3Q累積で10億円だったものが、2025年度は通年で446億円まで伸長している。2025年8月にFDAから皮下注製剤の承認を取得したことも大きい。
この初動3年間の売上推移を、エーザイの過去のブロックバスターで同じくアルツハイマー薬のアリセプトと比較する。(決算資料数字より)
アリセプトは決算資料上発売後6年目(2002年)からの数字しかないのだが、これを見ると、レケンビの初動カーブはアリセプトよりも上向いていることが示唆される。

もちろん、レケンビはすでにエーザイがアリセプトによる販路拡大・診療体制確立が構築された上でのビジネス展開であること、レケンビが上市された際には複数の治療薬が競合として存在している点などは考慮する必要がある。
また、エーザイは2025年3月、レケンビの2027年度年間売上予測を従来の5,000億円(33億ドル)から2,500〜2,800億円(17〜19億ドル)へ約半減に下方修正したことが業界紙P-Cubedのレポートで指摘されている。
エーザイは現在皮下注製剤の浸透、リキッドバイオプシーによる早期診断の普及、そして発症前段階への適応拡大などにも取り組んでおり、これらの成果にも今後売上に大きく影響するものと思われる。
1000億越えは確実だと思うので、ブロックバスターとなることは間違いないだろうが、今後グローバルとしてピークでどこまで行けるのか、アリセプトの最高売上である3228億を超えることができるか注目される。